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2015.03.14 Saturday

森本あんり著 反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体 を読んだ(6)

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     これまでの、連載は、こちら 反知性主義をめぐるもろもろ  をご覧ください。

    アメリカと日本の政教分離の違い

     アメリカ型の政教分離がなかなか理解されていないことに関して、森本先生は次のようにお書きである。特にこのような質問は、日本人のアメリカ政治学の学者の方からも個人的にお問い合わせがミーちゃんはーちゃんにあったりする。この本が出るまでは、くどくどと説明していたが、いまなら、森本先生の「反知性主義」読んどいて、って飛ばせる。

     現在は、非常に楽になった。有難い限りである。この本にかかわった方にこころからの御礼を申し上げたい。その、アメリカの政教分離に関して、次のように書かれている。

     実は「巡礼父祖(引用者注 Pilgrim Fathers)」たちの宗教的な熱心は、「建国父祖(引用者注 Founding Fathers)」たちの世俗主義で消えてなくなってしまったわけではない。このような疑問は、アメリカ史の専門家からも聞かれることがあるが、いずれもアメリカ的な政教分離の真意がよく理解されていないために生じたのである。「政教分離」というと、日本では政治から宗教を追い出して、非宗教的な社会をつくることであるかのように解釈される。しかし、アメリカではまさにその反対で、政教分離は世俗化の一過程ではなく、むしろ宗教心の表明なのである。連邦成立時に採択された厳密な政教分離政策は、宗教の軽視でも排除でもない。むしろそれは、各人が自由に自分の思うままの宗教を実践できるようにするためのシステムである。(反知性主義 pp.118₋119)

     大事なのは、「政教分離は世俗化の一過程ではなく、むしろ宗教心の表明なのである。」という部分である。アメリカの政教分離が宗教心の表明であることは分かりにくい。というのは、日本の政教分離の理解は、戦前の反省もあって
    第二十条
    •  信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
    •  何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
    •  国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
    となっているが、第20条の第一項はじつは、アメリカの憲法修正第1条の精神を実にわかりやすく表明しているのだ。日本の場合、戦前の反省があり、第2項、第3項である「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」の部分が強調されすぎで、この線に乗って靖国問題等がキリスト教界で議論の対象になる傾向にある。

     しかし、何より大事なのは、この日本国憲法第20条第1項の方だと思うのだ。このほうがアメリカ憲法修正第1条の精神を表しており、一つの教派、教義で塗りつぶしてしまわない、というアメリカ精神を表しているように思う。つまり、日本国憲法20条第1項の精神は「あくまで信じることは大事だ」という主張だと思うのだが、そのあたりは憲法学者の皆さんにお任せしたい。


    Founding Fathersの皆さん

    アメリカで成長したセクト主義者
     しかし、以下の部分で、あっさりと、ミーちゃんはーちゃんの大好きなヨーダー先生も、ミーちゃんはーちゃんがいるグループもは、セクト主義者ってラベルはってもらえちゃった。きゃぁ。

     宗教改革左派と呼ばれたセクト主義者たちは、その後どうなったのであろうか。彼らの多くはヨーロッパに起源を持つが、迫害を受けてアメリカへと渡り、そこで大きく成長する。メノナイト、ブレズレン、アーミッシュなどといった教派がそれである。バプテストやメソジストといった巨大教派に比べれば、彼らの数は大きいとは言えない。(同書 p.122)
     まぁ、たしかにうちは少数派であることをもって、よしとしている部分は濃厚にある。基本、既存のキリスト教会に対して、嫌なことを言う預言者的役割を持っているのだと思っている。その意味で、そのジーン(遺伝子)はきっちりとミーちゃんはーちゃんは継承している。無論、その預言者性は自派に対しても、きちんと発揮しているつもりである。

     ところで、池内恵著 イスラーム国の衝撃(p.58)の本で見た松本光弘氏によるアルカイダの分類として
    \掬アルカイダ
    ▲▲襯イダ星雲
    勝手にアルカイダ
    というのがあったが、それでいうと、キリスト教界だと、
    \掬キリスト教
     (カトリック教会・東方諸教会・聖公会・古プロテスタント諸派)
    ▲リスト教星雲
     (セクト型キリスト教・福音派のかなりの部分・新興プロテスタント諸派)
    勝手にキリスト教
     (セクト型キリスト教の発展系・カルト化教会・JW・モルモンの方々など) 
    という具合になるだろう。

    分権的志向とアメリカ国家

     アメリカにいて一番びっくりしたのは、アメリカ社会が、非常に分権的で、上部からの介入を極端に嫌うのだ。Mississippi Burningという映画の中で、公民権運動家の失踪に際し、連邦警察であるFBI(誘拐事件はFBIの管轄になりやすいので、FBIがすぐに出てくる)が捜査を始めることに地元の警察が嫌がらせをするシーンが出てくる。これが、連邦の関与を非常に嫌うその側面を非常に如実に語っている。
     アメリカの警察ドラマを見ていると、誘拐事件や政府関係の重要人物が絡む事件で、地元警察官がFBIが登場した瞬間に、FBIの捜査官に対して「Feds」と吐き捨てるようにいうシーンがよくみられる。FBIはその官僚的な態度、でかい態度(でしゃばり精神)、融通のきかなさで割とよく知られているらしい。州政策への介入などもかなり嫌う。その結果、アメリカを横断する高速道路でもあるI5やI90では、面白いことが起きる。
     1997年のI90(ワシントン州シアトルーマサチューセッツ州ボストン)で西から東に向かうと、ワシントン州では、高速道路の速度制限が時速65マイル、アイダホでは時速75マイル、モンタナ州では、日中は自己責任において制限速度なし!(ただし夜間は時速75マイルだと記憶している)という具合であった。州ごとに最高時速の制限が違うのであり、それを誇りにしているところがある。

     カトリックであろうと、プロテスタントであろうと、この問題(引用者注 政治制度が正しく機能する制度設計)の前ではすべてのアメリカ人がチャーチ型かセクト型のどちらかとしてふるまうからである。アメリカ人の多くはキリスト教徒だが、彼らがみな自分のことを格別宗教的な人間だと思っているわけではない。だがそれでも、彼らが繰り返し表明する政府や権力への不信感は、政治ではなく神学に根拠づけられている。人々は一方で政治権力の介入が必要であることを認めつつも、他方でそれはできるだけ小さい方がいいと考えており、できれば自分はそれとかかわりを持たずに行きたいと考えている。それが、アメリカ的な理想なのである。
     かつてのイギリス人批評家のチェスタトンは、アメリカを「教会の魂を持つ国家」と描写したが、それは半分だけ正しい。アメリカ国家は、「チャーチ」という魂とともに、それを絶えず疑いの目で見つめる「セクト」というもう一つの魂を持っている。権力への根深い疑念を持つ反知性主義は、このセクト的な申請によく合致して、さらに強められる結果となった。(同書 pp.124₋125)
     
     森本先生のアメリカ国家の要約として「チャーチの精神」と「セクトの精神」とが併存するキリスト教世界国家、という理解は非常に大事だとおもう。
     アメリカは、世界標準だ、デファクトスタンダードだ、と言ってIMF体制だとか、WTO体制だとか、自由貿易だとか、TPP加盟だとか、NAFTAだとか、割と他国に押しつけがましく普遍性を根拠に関与するのが好きな点では、非常にチャーチ型国家なのだ。普遍性(カトリック)を求める国でもあるのだ。

     しかし、日米貿易摩擦を起こした時に明らかになったように、自国の産業が危機にひんするとセクトの精神が突然発揮され、「国内ルールが大事だ!」っていう主張が問答無用で発揮される。その意味で、実にセクト型国家ではある。そして、日本車に火をつけて遊んでみたり(火遊びはいけませんなぁ)、Buy Americanが叫ばれたりする。ESTAもそうである。そして、Sonyがアメリカの企業だ、Hello Kittyがアメリカデザインだと思って、それをうんぬんされることがある。Sonyは日本の企業ですけど、Hello KittyはSanrioという日本の会社のものですが、といっても信じてもらえない。困ったもんだ。まぁ、産業保護してくれるかもしれないが。


    Buy American運動のステッカー

     ESTAに関しては、いつも遊んでくださる津の「のらくら者の日記」のHさまと、この間、Facebookで反知性主義をめぐるディスカッションしたのだが、それを紹介しておこう。なお個人が特定されかねないところだけいじっている。

    Hさま 3月9日

    海外旅行に縁のなかったこの15年。アメリカ入国にESTAなるものが必要になっていたとは全く知らなかった。これって、事実上のビザではないか。$14も取られるなんて!


    ミーちゃんはーちゃん
    これ、トランジットだけでも必要なんで、めちゃ腹立つなんですよ。もう5〜6年前からだったように思います。

    Hさま
    トランジットだけでもですか?! これも9.11の影響でしょうか。ところで、ビザ相互免除協定は互いに対等の立場で結ぶのが本来。でも日本政府が、アメリカ人の入国にESTAに相当するものを条件付けているとは思われません(詳しくは知りませんが)。一方的だとしたら腹立たしいですねー。

    ミーちゃんはーちゃん
    はい。911の影響で、Homeland Securityの傘下にTSAやらFEMAまで含まれ、お化け組織になってしまった影響かもしれません。
    ESTAはトランジットだけでも必要です。

    アメリカンな制度で、「来るなら来い、いやなら来るな」て言われた感じがしました。アメリカ国内でも問題になったんですが、セキュリティチェックに時間がかかるようになったためと、パスポートが偽造が多すぎ手間かかるから、ってことらしいです。日本のも偽造パスポート多い模様。

    以前は、空港でカード差し込んで当日処理、できたようですが、今はダメの模様です。ネットでできるからいいでしょ、ってのがやつらの言い分みたいで。

    ESTAがいやなら来るな、送り返してやるッ!というジャイアンモード全開って感じです。

    その代わりビザなしでいれてやる。旅行中心なら数年有効だから、いいじゃんって感じでしょうか。
    http://www.gov-online.go.jp/useful/article/200901/5.html


    Hさま
     なるほど、よく分かりました。「いやなら来るな」とはまさにアメリカンですね! 9.11後の対応でとは理解できなくもありませんが、やはりアメリカは若い国だなーって思いますね。国土が戦場になるという経験においてですが。

    ESTAのメンタリティーって、遡ると、ミーちゃんはーちゃんが今ブログで連載されている(森本あんり著〜〜)問題に行き当たりませんか? (ところでこのシリーズ、とっても興味深く拝読しています。そうそう、ゲーム理論のシリーズも本当にありがとうございました! 自宅PCにはブックマークしていつでも参照できるようにしてあります。1点、J. ハーバーマスの評価だけはミーちゃんはーちゃん様とは異なりますが。ハーバーマス目指して落っこちたのが民主党政権だと思っているので。でもこんなことはシリーズ全体の貢献には関係ないので無視して下さい。) アメリカの歴史は好むと好まざるに関係なく、おさらいしておく必要がありますね。

    ミーちゃんはーちゃん
    アメリカは、若いんですよ。本当に。永遠の野球少年、って感じでしょうね。そして、イギリス人貴族に向かって、以下の動画のように、平気でAmatuerと言い切れる若さというか乱暴さというか。

    https://www.youtube.com/watch?v=2Jq7xgVqPYA

    はい。ESTAのメンタリティーは完全に「反○○主義」です。
    確かに、最後にげんこつ出すかどうか、がH様と私の違いなので、個人的に最後まで出さない主義のハーバマスやヨーダーの思想に影響受けている部分での評価の違いになっている、と思います。

    民○党は、ヨーロッパ型の討議主義あるいは熟議主義を主張しながら、実態としてはアメリカ型のディベート主義を実施していて、見てて気恥ずかしいほどバランスの悪い方々なんですよ。自由民○党の皆様も、自由闊達な議論といいながら、熟議主義というよりは、形を変えた領袖支配のような気がして。

    熟議主義、ってのは生活に余裕がないとダメなんでしょうね。

    とはいえ、アメリカ国家は未だに何するかわからんところがあり、熟議ということがなじまないアメリカ精神や日本のキリスト教界の思想的基盤のかなり強い一角を占めているアメリカ理解と、そのためのアメリカ史は、もう少し注目されてもいいと思いますが、アメリカ政治の専門家(大学人)のアメリカキリスト教史の知識のなさには開いた口がふさがらない…。よくそれで、議論した気になれるんですねぇ、レベルです。

    Hさま
     「最後にげんこつ出すかどうか」・・ハハ、言い得て妙ですね! ミーちゃんはーちゃんは私をよく分かっておられるようです(笑)。ヨーダーに対してオドノヴァンだから、私は。(大学の)後輩、N牧師(兄弟団・I教会)がこの辺については一家言持っているようです。 私、アメリカの高校を卒業してますが、アメリカ史の成績はひどいものでした。当時は勉強する意味が全く分からなかったので。その後、日本で大学生になってから、A先生とのお交わりの中でアメリカ史を学ぶ意義をやっと見出した次第です。(A先生とはロイドジョンズを軸に英米のピューリタン、特にジョナサン・エドワーズを論じました。ロイドジョンズが最も敬愛したピューリタンはエドワーズだったので。Iain Murray によるエドワーズの伝記を読んだのもこの頃です。今いる教会で頑張れたのも、エドワーズの聖餐式(陪餐資格)論争とその残念な結末を知っていたからだと思います。「譲れぬ一線」は、エドワーズの信仰から教えられました。 )森本あんり氏の本は読んだことありませんが、ミーちゃんはーちゃんのブログに啓発されたので、近いうちに読もうと思います。

    ミーちゃんはーちゃん
     いやぁ、英語で、高校生のアメリカ歴史でしょ。高校生レベルのアメリカ史でも、彼らは日本の生徒が戦国時代を小学生ころからなじむのと同様に、ジョナサンエドワーズとか、市民戦争(南北戦争)を学んでますから。そら、彼我の差大きいんで、もう無謀としか言いようがないです。

    「げんこつ出す」…
    いや、そら、先生、日本のキリスト教会で、朝日新聞に載るような超有名人の医療者に立ち向かっていく人なんて、そうはおられません。

     一連の記事を拝見しながら、「あぁ、この人は最後にげんこつ出すんだ」ってあの頃の記事から感づいていますから。あの記事、よかったのに。
     神戸栄光教会のだいぶん前の牧師さんの息子さんのご高齢の医療者の方を取り上げ、その方は、「ヲワコンです」ってはっきり言い切れる人いないですよ。w

     しかし、A先生、身も蓋もないご発言。A先生、優秀すぎるんですよ。日本では。

     日本って、世界史やるけど、西洋史で、西洋古典読ませないじゃないですか。だから、政治学の人たちの宗教音痴、目も当てられないんですよ。先っぽのとこだけやろうとするから、ヨーロッパ人からするとハンドルの形状は知ってても車の足回り知らないバランスの悪い人たちと映るようです。

    イアン・マーレーですか懐かしいですね。うちにも1冊あった気がします。

     この本(反知性主義)、先生からしたら、ゲラゲラ笑うために読む類の本なんで、お近くの公共図書館でどうぞ。それで十分だと思います。

    という大変興味深いディスカッションがなされたのであった。Hさま、ありがとうございます。




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