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2015.03.09 Monday

森本あんり著 反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体 を読んだ(4)

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     さて、これまでの連載で、知性主義に走ったアメリカの建国直前のキリスト教界の姿を説明された部分を紹介し、反知性主義の背景や歴史性などに触れてきたが、今日からは反知性主義側の説明に入っていく。

    野外で開かれた伝道大会

     反知性主義の原点として、リバイバル集会があることを示したうえで、このリバイバル集会が野外のサーカスが利用するような大型テントや町の広場で開かれ、それがのちのアリーナやコンベンションセンターなどのご先祖様に近いのではないか、ということがご指摘されている。なぜ、野外やテントで開かれたかに関して、次のようにおっしゃっておられる。
     そもそもなぜ野外なのか。そしてなぜ日曜日以外なのか。(中略)それは単に多くの人が集まることができる場所がほかになかったからではない。そうではなくて、街の体制を支配している既存教会の牧師たちが、こぞって反対したからである。(中略)
     「神の行商人」と揶揄されたホイットフィールドだが、行商人のように神の話を売って歩いたのは彼だけではない。リバイバルの主たる担い手は、彼ほど有名でないたくさんの巡回説教者たちである。彼らは、まさに巡回セールスマンのように、街から街へと渡り歩いて神を商売にした。その出自は全くそれぞれで、どこかの大学を卒業したわけでもなく、自らの信仰的確信を頼りに、ある日どこからともなく街にやってきては、人々を集めて怪しげな説教をして回るのである。
     ところが、皮肉なことに彼らの話は抜群に面白い。何せ、それまで人々がきいてきた説教といえば、大学でのインテリ先生が2時間にわたって滔々と語りつづける難解な教理の陳述である。それに比べて、リバイバリストの説教は、言葉も平明でわかりやすく、大胆な身振り手振りを使って、身近な話題から巧みに語りだす。(同書 pp.82-83)

    1週間のぶち抜き伝道集会…
      そういえば、わが教派でも昔、天幕伝道の習慣があって、1週ぶち抜きの伝道大会とかやっていたらしい。昔の記録を見てみれば、そういう記録が出てくる。1週間ぶち抜きの伝道集会は、現在の日本ではほとんど見られないと思います。私が最後にこのタイプの伝道集会に出会ったのが、1997年のアメリカでした。

     まさに、巡回伝道者という感じのお話をいただきました。お話は、抜群に面白くはなかったですが、50分くらいの割と比較的わかりやすい(過度に学問的でないという意味)話を午後7時くらいから1時間ほど、お話を聞いたことがございます。まさに、街から街へと、行かれておられる様なお方でした。

     面白かったのは、この巡回伝道者の方が来られた時に、当時言っていたシアトル南郊の教会に普段は来られてない教会外の恐らく他の教会の信仰者の人が、場を楽しく盛り上げようとギター演奏でも、と思っ他のか、ギターを持ってこられて、「ギターでも弾きましょうか」といったら、「No Thank you!」と即座に断られてましたことです。うちは、無楽器派だったのもあって、断られたようですが。今思い起こしていけば、ウィ○アム・フ▽ンク○ン・グ▽ハムの大会などでは、ギター演奏なんかがありますので、そのノリで来られてたのでしょうが、「歌舞音曲の類は教会では、・・・」ってガッチガチの教会だったので、とても残念な結果に終わりました。

    「このおじいさん誰?」事件

     この部分を読みながら、ふっと思いだしたことがあります。今は物故者となられた自派の中で割とよく知られた巡回伝道者の方が2010年頃に、私がおります教会来られた時に、割と長期にその教会に来ておられた方信者でない方が、大きな声で、「このおじいさんだれ?」と言われたことがありました。

     そうなんです。自派の中では超有名人であっても、自派以外では、まったく無名の一人のただの「おじいさん」でしかないわけなんです。この方をご紹介された司会の方は苦笑するしかなかったですねぇ。

     どうも、「特別な方が来るから、ぜひ」とこの方にお話しされ、別の教会員からお誘いがあったようでした。しかし、その方にとってみれば、話があまり面白くもなく、楽しくもないお話だったので、なぜ、この方が尊敬を集めておられるかの理由がおわかりなりにくかったようで、「このおじいさん誰?」と身も蓋もないご発言につながったようです。

     例えば、あちこちで講演会形式での伝道のためのイベントや音楽家の方が招かれてイベントが開かれることがあるでしょうが、しかし、外部の人から見ても、あちこちで開かれている講演会の講師や演奏家の方がたは、外部の人からしてみれば、おそらく「この人誰?」の場合が一般的なのではないだろうか。

     よほど、有名な講師でも、キリスト教業界以外の人にとってみれば、「この人誰?」になるような気がするんですね。とすれば、相当名前が売れるまでは、マッチポンプといわれようと、炎上体質といわれようと、ホィットフィールドがとったような新聞広告をして、知名度を上げながら、さらに参加者を増やしていって問題化させ、さらに知名度を上げていくような戦略をひたすらとり続けるしかないわけです。


    当時の野外集会の様子
     

     画面中央に下着姿になったかのような女性の姿が見えるし、講壇の下では女性が倒れているように見える。


    このようなテントでの伝道を揶揄したエルマー・ガントリーの予告編

    霊性運動としてのリバイバル運動
     最近のマクグラスのキリスト教の霊性は、非常に冷徹なマクグラスらしい本であるし、ジャン・ヴァニエ、ヘンリー・ナウエンなどのスピリチュアリティ論とは雰囲気が違うか、理性が強い聖書理解のなかで、霊性というのはある面、無視されるとは言わないまでも軽視されてきた面はあるであろう。そのことについて、初代教会に戻れ運動の一環としてのリバイバルが起きてきたことに関して、次のようにお書きである。

     リバイバリズムは、この意味でも一種の回帰運動である。ここに現われているのは、知性と霊性との対立ではなく、知性のヘゲモニーに対する霊性の異議申し立てである。知性そのものに反対しているわけではない。だが、霊性より知性が重要だ、という価値づけには激しく反対する。そしてそのよりどころは、「神の前では万人が平等だ」という極めてラディカルな宗教原理である。(同書 pp.85₋86)
     リバイバルは、宗教的情熱でもあると同時に一種キリスト教の霊性とのつながりが深い。そして、キリスト教の霊性は、旧約聖書の中での霊がルーアッハ(風、息、息吹)であり、新約聖書では、プネウマないしプニューマ(これまた風、息、息吹)であるので、一種捉えどころのないところもある。風が顔に当たって、あぁ、風が吹いているのだ、と感じることはできても、それを直接視認できない、検証できないのとよく似ている。何、風洞実験がるではないか、という方もおられるかもしれないが、あれも、煙などを入れて、可視化しているだけに過ぎない。風そのものをとらえるのは非常に難しいのだ。そして、風と同様に、霊は渦のようなところがある。風が渦を作り、あのどでかいジュラルミンの塊の飛行機を浮かせるように、霊はリバイバルを起こすこともあるのだ。渦は怖いもので、旅客機を落とすことがある。ボーイング707が富士山付近での乱気流に巻き込まれ、墜落した話は、流体力学関係者、航空関係者の間では有名な話である。詳細はこちらのWikipediaの記事を。


    風洞実験の画像 翼の当て方によって、翼の後方で乱流(渦)が発生しているのがわかる


    済州島と屋久島によるカルマン渦 気象衛星からの写真 Tenki.jp様から

    熱心、それは常軌を逸した人物を示す語
     現在の日本でも、宗教関係者は、あっちの人、とされることがあるようである。それは、宗教に強く影響を受けた人が、ある面、通常の社会常識の枠内で生きていない人であり、その通常の社会参照枠から外れたことに熱心さを持っているからである。リバイバル時代には、この手の熱心さを持った人が幾人も出た。

     とはいえ、当時の人々が信仰復興運動という出来事を皆同じように見ていた、というわけではない。「熱心」(enthusiasm)という言葉は、今日なら肯定的な響きを持つが、当時はとても悪い意味だった。「あの人は熱心だ」というのは、「あの人は常軌を逸した危険人物だ」という意味だったのである。(同書 p.87)
     恐らく、Lady Killersのシーンにそれを思い起こさせるシーンがある。多分、こんな感じだったのであろう。こういう熱心さ、と戯画化されるような可能性が高かったのであろう。


    Lady Killersの教会のシーン リバイバリズムの伝統がよく表れている

    多民族、多教派の融合の契機となったリバイバリズム

     アメリカ国家は人種のるつぼであると同時に、信仰のるつぼでも現在はある。日本的な神仏習合のような融合ではないが、幅広いキリスト教が化学反応を起こしているようなるつぼでもある。そして、みんながちょっとづつ違うキリスト教理解、聖書理解を抱きつつ、In God We TrustをPredgeでするのだ。


    US pledge of allegiance (Lee Greenwoodによる )


    リバイバリズムとアメリカの反逆精神

     信仰復興は、独立革命の30年ほど前に起きた出来事である。それは各人が自分の内面を見つめ、自分に信仰があるかどうかを吟味することを求める。そして、ひとたび確信を持つことができれば、地上のいかなる権威を畏れることもなく、大胆に挑戦したり反逆したりする精神を準備する。このような自主独立の精神が、この自覚と平等意識を培い、結果的にアメリカ社会を独立革命へと導き、その後の民主主義の発展を促したことは、容易に想像できるだろう。
     植民地全体の統一という点でも、信仰回復の果たした役割は大きい。それまでの植民地は、イングランドだけでなく、スコットランド、アイルランド、ドイツ、オランダ、スイスなどと出身国の背景ごとに別々に色分けされており、その上に、カルヴァン主義、ルター派、カトリック、クエーカー、バプテストなどという教派の違いが塗り重ねられていた。信仰復興は、こうした出身や教派の違いを超えて伝播する。人々はそこで初めて「アメリカ」という一体性を感じるようになったのである。(p.92)
     前にも触れたが、アメリカの反骨精神というのか反逆精神は、日本人から考えたら、どうかしているのではないか、と思われるほどに、反骨なのである。前にも紹介したが、アメリカで最初の高校生による銃乱射事件が発生したコロンバイン高校の校門に掲げられている学校を表すタイトルが、Home of rebelsであり、反乱者の居住地あるいは反乱者の家と、まぁ、皮肉なものである。


    銃乱射事件が起きたColumbine High School

    アメリカの文化を形作ったリバイバル
     確かに上で紹介した映画Lady Killersなどの映画に示した教会のシーンや、テレビ伝道師から、ダボヤと呼ばれたブッシュ大統領を当選させるに大きく貢献したキリスト教右派(この呼び方は嫌いだが)や最近話題のペイリンおばちゃんが活躍して居るTea Partyの皆さんから、アメリカ文化の典型例であるディベートコンテストに至るまで影響しているのだ。
     

    まるで、現代のテント伝道集会のようなTeaPartyのラリー

     19世紀の指導者チャールズ・フィニー(引用者注 この方はこの記事参照)やドワイト・ムーディー(引用者注 この方はこの記事参照)も、20世紀の大衆伝道家ビリー・サンデーも、さらには現代の派手なテレビ伝道者(引用者注 この記事 とか この記事を参照)に至るまで、みなこのアメリカ的な福音主義の伝統の担い手である。もし大覚醒がなかったなら、アメリカのキリスト教はまったく異なった姿に成長したことであろうし、そうなればアメリカの文化も政治も経済も外交も、今とは全く異なった相貌を示したことであろう。その意味で、信仰復興運動こそがアメリカを作った、といっても大げさでない。(同書 p.93)
     アメリカでは、法廷がまずそうであるように政治にしても、ディベートで、どちらがより説得的(Persuasive)か、ということが争われる。そして、説得的であった方がすべてをとる、という体制が取られる。


     以下は有名なKennedyとNixonの1960年のPresidential debateである。

    Kennedy VS Nixon Presidential debateの一部

     以下の動画はアメリカのアフリカ系アメリカ人の大学のディベートチームが、ハーバード大学のディベートチームにディベートを挑んでいく、一種のアメリカンドリームを絵にかいたようなThe Great Debaters(日本未公開作品)の予告編である。この映像では、テント集会のイメージやハーバードの内部の様子などもちらっと見える。


    The Great DebatersのTrailer

    次回は、いよいよ反知性主義が教会にもたらしたものについてのご紹介の予定。





    評価:
    A.E. マクグラス
    教文館
    ¥ 3,024
    (2006-02)
    コメント:日本語がとにかく読みにくい。中味の問題というよりは翻訳の問題のような気が多分にするが、内容的にはいい。

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