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2015.01.02 Friday

経済学・ゲーム理論・意思決定論・心理学 その2

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     お年玉第2弾です。

     前回の記事

       経済学・ゲーム理論・意思決定論・心理学 その1

    では、クラッシックな経済学は、完全市場(市場参加者が多数で、市場への影響力が少ない、完全情報で、みんなが価格などの情報を瞬時に共有できる、同質的なコモディティ化が進んだ取引対象)といったかなり現実的な仮定を置いた対象に関しての分析を進めてきたことなどについてご説明いたしました。

    車は車ですけど、完全市場ってどこまで?
     しかし、現実は、そうは問屋が卸してくれないのですね。世の中に完全市場なるものはほぼ存在しないようです。メルゥシーディスと呼ばれる車も、大八車も車は車であるが、だいぶん違うだろう。下記の車も車という点では車ではある。

     

    今まで見た中で一番かっこよかったクラフトマンシップが光輝く
    手作り感満載のトヨタ車

    なお、この特殊車両のエンジンは、1驢馬力

     前回の記事では、ブランドや、商品の品質などの差別化で企業が競争始めたことについて触れました。しかし、企業をとりまく環境は、それだけではないのですね。

    完全市場は少ない企業の競争環境

     企業の競争環境は、純粋の完全市場ではなく、寡占市場、複占市場、独占市場など、一人の市場での行動が大きく他者に影響を及ぼす状態が生まれてきたし、さらに技術的な特徴、品質や規格などでも他社と差別化を図り、競争市場でありながら、一種の独占市場を形成することができるようになったのです。

     スーパーで買うことが多くなってきたポリエチレンバッグ(白い買い物袋)も、グッチやシャネルのバッグも、モノを運ぶという機能では同じなのだ。その意味で袋物市場という意味では完全競争市場に近い市場なのだ。クサヤを入れようが鮒ずしを入れようがドリアンをいれて運ぼうが、袋は袋であるのです。

     しかし、そこに、グッチやシャネルのデザインやロゴを入れるだけで、その袋は単なるモノを運ぶという機能は同じであっても、そこに価値の違いが出てきて、独占的にグッチやシャネルの店でしか提供されないから、購買者にとっては独占市場になっちゃうのですね。ブランドや意匠権などの知的所有権が発生する場合、知的所有権を確保することで、独占市場にできちゃうんですね。これが。

     グッチやシャネルのマークの付いたクサヤを入れるポリエステルバッグなんかがあったら面白いけれども、それをやると、商標法違反で立件はまず確実です。なぜならば、ポリエステルバッグにそんなものをつけたら、これらのマークに安物のイメージがつくので、ブランドの価値がかなり下がってしまうからです。

    知的所有権を使った競争市場からの脱却

     商標権など知的所有権の発生で、独占市場になってしまえば、しめたものになっちゃうのです。独占市場の場合、実質上相対(あいたい)取引になるので、通常の競争市場での価格を無視できるか、意識するにしてもあまり意識しなくてもよいことにできるのです。つまり、グッチは、ポリエステルバッグの価格を意識せずに自社製品の価格をつけることができることになります。

     こういう独占市場や寡占市場、複占市場の分析は、もちろん従来の市場における生産物の供給量と、市場の需要量、そこで決まる価格の観点からも分析できなくはないのですが、それ以上に、ゲーム理論で理解する方がよいことになります。世の中、市場で何らかの形で競争する場合にしたって、相手はそんなに数は多くないのですから。


    寡占だからこそできること
     
     数が少ないと何が起きるか。お互いに話し合いで解決しようという雰囲気が生まれることになります。つまり、協調行動の可能性が大となります。つまり、Head to Head Competitionというか、頭と頭をぶつけるような競争関係は、事前に合意形成ができれば避けられることになり、無益な競争を避けることができるのですね。

     つまり、談合とかができれば、より高い利益〔利得〕を企業は得られることになるので、談合やオープン市場での価格品質競争よりも、密室での調整が重要になってくるばあいもあるようです。

     こういう合意形成に関して、前回ご紹介したRaiffa先生は研究しておられ、どのようにして相互に有利な価値状態に達するのか、ということを研究しておられるようです。

     つまり、相手がどう動くのが相手にとってどういう意味を持つのか、という戦略的行動とその分析が非常に重要になるようです。

    情報と行動
     その意味で、相手の動きを予測しながら、自らの行動を変えてくことになります。つまり、海戦ゲームのように限られたデータから、相手の動きがどのようなものか、ということを想定しながら、自らの行動を決めていくことになるのですね。


    海戦ゲーム 

     まだ、海戦ゲームの場合まだ簡単です。というのは、艦船の位置は動かないから楽なのだが、実際の潜水艦などの場合、相手は移動しながらであるから、どこにどのような手を打つのか、ということで結構悩まなければならなくなるのですね。

     実際の潜水艦では、ソナー手という音響機器で相手の艦種と移動方向、作戦行動の状態の動きを確認し、相手の位置を確認するという手段があるのですが、それとても、なかなか難しい、らしい。ステレオで聞けないので、位置精度が悪いらしいので。

     そういう意味で、行動するうえでどの情報を使うのか、そのうえでどう行動するのか、ということが生存のためにも重要、というか、命にかかわることになります。その意味で、集められる情報のうち、それをもとに判断する必要に迫られるということだそうです。


    潜水艦のソナー室

     映画The Thirteen Daysというので、コミュニケーションに関する面白い記述があったのでご紹介。言わずと知れたキューバ危機の際に、実際のロシアの商業輸送船とアメリカの海上封鎖体制の戦闘艦との間の位置関係で、コミュニケーションをとろうとしているのだ、と海軍提督にと喧嘩しているマクナマラとの怒鳴り合いのシーンがあるのですが、そこで、これまで見たことのない言語と文法でソ連と対話しているのだというシーンがあります。これなどはまさに、血を流す直前の外交という戦争ギリギリのところでのコミュニケーションをうまく描いているようにおもいます。



    13 Daysのキューバ危機のワンシーンで戦闘艦を使ったコミュニケーション

    情報の利用・相手の動きを読む心理戦

     情報を使うと同時に、相手の行動がどうなるかを読むというのは、キューバ危機の時もそうだし、企業の競争の場合でも相手の行動を読む心理戦になっていくように思います。

     さて、ここまで触れたように、実際の企業活動は、商標権を利用する、特定の技術を採用する、といった方法で、ちょっと条件を変えるだけで、完全競争市場から抜け出し、独占ないし寡占構造に市場を移行させることができるのです。寡占構造になれば、これまで指摘したとおり、相手の動きを読む心理戦になりかねないのです。

    不完全市場と心理戦

     自分が直面する市場を、不完全競争市場にかえられるからこそ、企業にとっての利益が増えるという側面が出てくることになります。この不完全市場の中での完全市場との行動の違いを説明しようとする試みが、70年代以降研究が進められ多と言えようかと思います。

     そののち、その研究成果が産業組織論、特に新しい産業組織論と呼ばれる分野で熟成していくことになったといえようかと思います。また、服部先生ご紹介のKahneman & Tverskyでは、本来人間の記憶や行動そのものが合理的であろうはずがなく、それを経済モデルに取り込んで、現実の行動できたのが、Kahneman & Tverskyの貢献といえましょう。

     そして、従来の合理的な経済行動をとる古典的モデルや新古典派的モデルを想定し、その行動を数学の一種の微分方程式体系として構成し、そこで解を求めるような研究には限界があることを示したのは最大の貢献だろうと思います。そのように、一種のゲーム理論によるモデル化が持ち込まれることで、実際の不完全市場での企業の行動が経済モデルとして表現可能になったと思うのですね。

     意思決定論では、意思は一種の心理的要素を多分に含むので、結構心理学の研究成果が生かされていることが多いです。最下部で紹介するMitroffを読んだ時も、そんな感じだったです。

    経済学は心理学となるか?

     経済学が、神から与えられた地をどのような運営をするのか、の学問から発展していくうちに、近代経済学は、金銭というものの交換とそれからもたらされる社会がどうなっているのかに関しての分析するのを中心とする学問になってしまった。もちろん、厚生経済学のような、社会全体における幸せをどう評価するのか、より公正な社会は、どうすれば実現できるか、というような学問分野もございますが。

     こういうあたりのことを考えおりますと、経済学のすべての分野は心理学にならないけど、経済学の交換に関する部分に関しては、本来人間の効用(嬉しさ)を扱うので、本来的には、心理学的要素とは切り離せないはずのものだったにもかかわらず、人間の心理を切り離して、経済学という枠組みの中で扱えるもののみを扱うようになったと思います。経済学の交換と金銭の枠組みにこだわることを、経済学としてきた、というようなところはないと言い切れないと思います。まぁ、それだけ、経済現象が複雑であるし、どんどん、現実が変わってきたというのもまた事実だと思います。

    これからの本命は公共圏とコミュニケーションかも

     先ほどの映画13Daysではないですが、戦闘艦や潜水艦を使ったコミュニケーションもあれば、金銭と財やサービスの交換も公共の場所としての市場を介してのコミュニケーションでもあるとはいえるとおもうのです。

     その意味で、実は、これらのものがコミュニケーション理論で扱えるのではないか、それもゲーム理論を使って、ということを言い出したのが、ドイツの哲学者のユルゲン・ハーバマスというおじさんであるといっていいとおもいます。

     彼の言いだしたのが、公共圏とそこで繰り広げられるコミュニケーションに関する理論という概念だとおもいます。なお、この公共圏という概念は、政治学の分野では、新しい公共という概念に移り、稲垣和久先生らのグループでのキリスト教と公共圏への広がりもあるようです。その意味で、近代社会後の社会(ポストモダン社会)を考えるうえで、この概念は欠かせないように思うのです。

     その意味で、のらくら者の日記での予想は半分正解という感じもしますが、ちょっとずれているかもしれないなぁ、と思っています。これからしばらくの経済学は、公共圏とコミュニケーションという形での展開として進んでいくのではないか、と個人的には思っております。

     一応、ハーバーマスの日本語版の本をご紹介しておきますが、日本語はお世辞にもスラスラ読めるとは言いにくいので、英語版かドイツ語版をお勧めいたしたいとおもいます。ちなみに、ミーちゃんはーちゃんはドイツ語は、読めませんがオリジナルはドイツ語らしいです。




    評価:
    Ian I. Mitroff
    Berrett-Koehler Pub
    ---
    (1998-01-15)
    コメント:ずいぶん前に読んだのですが、非常によかったと思います。

    コメント
    管理者の承認待ちコメントです。
    • -
    • 2015.01.02 Friday 20:41
    tk様

    コメントは拝見しましたが、本文との関係性が認められませんので、非公開と致します。

    あしからずご理解くださいますように。
    • ミーちゃんはーちゃん AKA かわむかい
    • 2015.01.03 Saturday 19:28
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