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2013.08.28 Wednesday

D.L.Moodyの後方乱気流

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     この前、行方不明だった図書(旅行鞄に入れていて取り出すのを失念していたために行方不明だった)が発掘されたのであるが、その発掘された書籍の中から、アメリカ福音派の歴史に関して書かれていた青木先生のアメリカ福音派の歴史をもう一度ちらちらと読み返してみて、やはり、現代の日本の福音派の原風景とそのややこしさの原風景は、どうもD.L.Moodyとその追随者にありそうな気がしてきている。

    D.L.Moody時代の時代背景
     社会的不公正について

     この人は、非常に熱心に神のことばと、神との和解を説いた、という意味において、ミーちゃんはーちゃんとしては非常に高く評価している。南北戦争後、ともすれば小競り合いや、痛みを伴う社会の中において、神との平和を説くことで、希望を人々に与え、人々の和解を説き、神へと目を向けさせようとした取り組みは、評価されてしかるべきかと思う。また、都市化が進展し、Golden Age(金ぴか時代と青木先生は書いておられたが、どちらかというと金のように光り輝く明るい未来が開けている時代、ややポジティブな意味もありそう。その昔、ゴールデン洋画劇場というテレビ番組があった)に向かう中、資本家(たとえば、カーネギーとかロックフェラーとか)と肉体労働力の実が資本である非熟練労働者や外国からの移民などの間での社会の軋轢などの問題も視野に入れつつ、キリスト教の伝統的な世界観を重視したようである。この辺は青木(2012、pp。111-112)や、同時代人のラウシェンブッシュの記述参照。

    ゲリラ的活動家としてのD.L.Moody

     Moodyを紹介した記事でも触れたが、彼は神学者トレカに記載されてはいるものの、伝統的な神学校の教育を受けていないようだし、どこかの教派の牧師として正式に承認されているわけでもない。勝手連的にゲリラ戦をやった人のようだ。つまり、彼がシカゴで始めた教会はアメリカの単立教会の父祖、みたいなところがある。それまでの教会は、既存のキリスト者集団からの分離派であったり、独立組であったりしても、どこかの既存のキリスト者集団からの分離派ではある。まぁ、Moodyさんは、無理にいえば、回心経験が会衆派であるから、会衆派の分離派ととらえることはできるが、牧師としての叙階というのか按手礼は正式には受けていない模様。

     まぁ、ナザレのイエス君だって、勝手連的なゲリラみたいなところがないわけでない。少なくとも、当時の指導者層からは、その扱いは受けた痕跡は聖書に見られる。完璧に指導者層からは、ディスられていたようではある。

     ただし、Moodyの聖書理解と終末論に影響を与えた、J.N.Darbyはアイルランド国教会(Church of Ireland)の聖職者であったので、伝統的な神学教育をアイルランドで受けているし、彼はアイルランド国教会の聖職者として正式に叙階されている。

     ところでMoodyさんは、抜群のコミュニケーション能力(靴屋の職人時代、靴屋経営者時代に培ったのではないか、と思う)とラテン語、ギリシア語、へブル語、英語でも学識のある人々が使う言葉を一切使わずに聖書からただ平凡な言葉でわかりやすく(これまた、単純化の誤謬を生みやすい)語った。そして、彼の話は多くの人々(大衆)に受けた。彼は、決してエリートではなく、エリートの対極と目されてしまった、あるいは担がれてしまった、のではなかろうか。イギリスでは、名門大学で講演したがあまり良く思われなかったようである。(大体において、イギリス人はアメリカ人があまり好きでない。格下に見る傾向がある。)

     当時のアメリカ社会において、エリートとは東部エスタブリッシュメントの皆さんであった。そして、これらの人々が内包していった学としての聖書学(聖書批評学)への対抗文化(カウンターカルチャー)として、聖書原理主義、聖書無謬論へとつながっていったようにおもえてならない。なお、ミーちゃんはーちゃんの聖書無謬論については、すでにふれた通り。

     また、Moody君は、おそらく、ナイアガラカンファレンスで中国孤児伝道をしていたハドソン・テーラーと出会い、そこで、ディスペンセイション説にさらなる影響を受けたり、プリマス・ブレズレンに出会っているのかもしれない。どのようにしてプリマス・ブレズレンと呼ばれる人々の影響を受けたかどうかはよくわからないが(たぶん、英国に行ってかなり影響を受けているとは感じる)、かなり緩やかな連合体を目指した人のようなので、教派的区別はあまり気にしていなかったこともあり、幅広い人々に幅広く影響を与え、また受けたようである。

     ディスペンセイションにMoodyが触れたときの記述として、青木(2012)では、次のように指摘している。

     ムーディーは、イギリスで伝道していた時、ケズウィック運動とともにもう一つ感化をうけたものがあった。それが、「前千年王国説(Premillenialism)」である。彼は、1877年の時点で日記にそのことを記している。さらに、1885年の「ノースフィールド会議」でもそのことを認めている。
          (青木(2012)p83.)
    なお、この前千年王国を当時触れ歩いたのが、以前、ご紹介したJ.N.Darbyというご仁である。

    今日の日本の福音派の
    原風景としてのD.L.Moody

     こういうD.L.Moodyの出てきた状況を見ていると、今の日本の単立教会群で、牧師の皆様方が、普通の人に分かることを重視するあまり、

    普通の人が分かるのがよい →
      普通の人がわかる範囲の聖書理解でよい →
       学問的な聖書研究を軽視
       学問的な聖書研究をリベラル派といってディスったりする人が登場


    という構造がみられるような気がする。ミーちゃんはーちゃんとお付き合いのある教役者でもある牧師先生方はこのようなことをおっしゃったりすることがない方ばかりなのであるが、いろんなところから聞こえてくるお話、風の便りによれば、このようなことを聖書理解として堂々と語られる方もおありのようだ。

     このようなことを聖書理解として語るからこそ、そして、その構造がスコープス裁判(進化論VS創造論、科学VS聖書という問題のすり替えがなされた出来レースをめぐる茶番劇 詳細は青木(2012)pp.167-182)とその後の根本主義者と社会から目される人々の愚行の結果、青木(2012)では、「根本主義者は無学で頑なな田舎者である」とのご批判の声を拾っておられるのだろう。

     このような無学でかたくなな田舎者的な発言と誤解されかねないご発言をされる方が居られる
    背景に、このMoody君の影響(それも、Moody君が大成功してしまったことの影響)が見え隠れするような気がするのは、ミーちゃんはーちゃんの気のせいだろうか。 

    単立教会での牧師の原型としてのMoody

     単立教会で開拓伝道をやり、牧師をすれば、牧師資格を問われることはまずないのではないか。教義試験やら、うっとうしい語学の試験やら、神学校や聖書学校に行かなくても、牧師としてやっていけてしまう。だからと言って、そうしたらよいと勧めるつもりはミーちゃんはーちゃんにはない。牧会には、行きすぎを思いとどまるためのブレーキとしての神学が絶対に必要だから。神学は、宣教のエンジンでもないように思う。

     ところで多くの人が集まれば、もうその牧師の地位は不動のものとなる。そして、その牧師先生のお話を聞いて、イエスと出会って行かれた何も知らない信徒さんは、その牧師先生のことばを『神のことば』・『聖書の教え』と誤解して受け取ることになりかねない人々も出てくる。となれば、重要人物扱いである。

     たとえ、学歴コンプレックスの塊であろうと、その他のコンプレックスの塊であろうとも、もはや、『先生』であり、ひとかどの人物扱いになってしまう。ひとかどの人物扱いしてくれるグルーピーのような人が周りにいれば、さらに、その権威性は高まるという構造は、以前の記事で示した通り。

     そして、他人がほかの書物や聖書学校で学ぶことを禁じてしまえば、そのひとかどの人物として目される人は、お山の大将の位置を脅かされることはない。四の五の言うご仁がいれば、「悪霊がどうのこうの」とか、「学問は、世のことであり神のことでない」といってのけ、最悪、「神に油注がれた者に口答えするものは…」と自分自身を神格化し、偶像にすることを会衆に向かって言ってしまえば、もはや無敵、向かうところ敵なし、まさに「ネ申(ねもうす)」となる。ただ、所詮お山の大将にしか過ぎないが。まぁ、世に鶏頭牛後ともいうではないか。それはそれで本人は幸せだろう。その周囲は不幸以外の何物でもないと思うが。

     「悪霊がどうのこうの」、「学問は世のこと…」、「油注がれた者に…」そんなことを言われた時には、ふふーん、とその言葉を鼻先で笑えばよろしい。何で、ミーちゃんはーちゃんがこれらの方々のご発言というか、手口にここまで詳しいかと言われたら、これらのことをミーちゃんはーちゃんに向けてかつてご発言になられる方がおられたし、最近でも時におられるからなのだな。

     Moodyは自分自身をどうとらえていたのかは、Moody研究者ではないミーちゃんはーちゃんにはわかりかねるけれども、本来の自分の意図と違う形で取り上げられることに対して、身を持て余していたのかもしれない、とは想像してみて遊んでいる。歴史家ではないから、できる遊びではあるが。

     歴史家には許されない質問であるが、市井のおじさんで、与太話の大家のミーちゃんはーちゃんとしては、「もし、Moodyがこれほど影響力を持ち得なければ、そして、大衆伝道家として成功しなければ、日本に渡ってきた福音派系キリスト教はもうちょっと味わいの違うものになっていただろう」と思う。同様に、「中田重治先生も後年の悲劇」を起こすこともなかったかもしれない、というのは、正直ある。

     そして、Moodyに影響を受けたとされるビリー・グ○ハムも日本に大伝道大会したり、ドイツで大伝道大会してバルト先生から「あれは脅迫です」とディスられることもなかったであろう。また、アイアンサイドという変わったおじさんが米国でのブラザレン運動に顔出したりもしなかったであろう。

    まとめ
     ミーちゃんはーちゃんは、Moodyを否定的に評価しているわけでない。Moody先生は、Moody先生で一生懸命神の国を伝えようとして、こうなってしまったのである。善意無過失であったから、結果としてもよいはずだ、とは言わない。問題がない、とも言わない。

     Moody先生とそれを取り巻く社会環境を十分に理解せずにサルまねに突っ走ってしまったMoody先生ほど出来の良くない(ミーちゃんはーちゃんを含めた)弟子たち、あるいは後世の後継者、勝手連的に追随してしまった人たちがあまりの不幸を引き起こし、まきちらした場合もあったのではないか、と思うのである(ミーちゃんはーちゃんが不幸を起こし、不幸をまきちらしたことがあることは、この際素直に認める)。人間社会とは、かくも残酷なほど残念なものだと思う。このような不幸をおこされた方々の被害にあわれた方には、衷心よりのご同情申し上げる。そして、キリスト者として、「平安あれ」と祈らざるを得ない。

     先駆者や偉大な人は、その人が生きている時代においては、よい意味では正当に評価されないという意味でも、その人の死後は、その劣悪なコピーが出回るという意味でも、正確にというか、正当に理解されないのだ、とマキャベリ風のことを思うてしもうた。ミーちゃんはーちゃんは、マキャベリの弟子でもあるので。悪霊の子と呼びたければお呼び。




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    コメント:アメリカ福音派の成立とその後にまつわる論争をとりあえずまとめた本。現代の日本においてはこの本しか日本語で読める本はない。

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    コメント:歴史的価値が高い書籍の一つ。本文自体も参考になるが、寄稿された現在の福音派の皆さんのコメントが面白い

    コメント
    管理者の承認待ちコメントです。
    • -
    • 2013.08.28 Wednesday 07:50
    ムーディーの大衆伝道の話は大変僕の中でウケました。僕もムーディーのような先生に福音を伝えられてきた感じがします。
    正規の神学校はでておられても、TCCの前身JCSのような基礎学力を綿密に問わない神学校出身のY牧師のスタイルを思い出しました。救霊伝道に熱心で教会に来るものみな奉仕に担ぎ出された思い出があります。決して、聖書を深く知識として学ぶのではないグループでした。
    • 渡辺信治
    • 2013.08.29 Thursday 07:54
    渡辺様

    神学と牧会の両方をそろえた牧会者というのは少ないのかもしれませんねぇ。伝道熱心のあまり、聖書から踏み外れるのも困りものですし、言語明瞭意味不明でも、困りますし、お話を聞いても、聴き手に響かないのも困りますしねぇ。

    この辺り、何とかならないものか、と思います。本当に。
    • ミーちゃんはーちゃん AKA かわむかい
    • 2013.08.29 Thursday 07:57
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