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2013.04.10 Wednesday

教会が牧会者のミニ王国となりやすい理由(3)完結

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     教会が牧会者のミニ王国化しやすい理由を少し考えているのだが、その最終回として、包括組織がない組織・規模自体が小さい組織において、ミニ王国化しやすい、ということで記事を書いて、いったんこの連載は終了します。

     なお、これまでの議論は、こちら。


    包括組織がない・規模が
    小さいことによる問題

     別に、包括組織がない、またはその制約が非常にゆるい世界では、教会ばかりでなく、この種のことは起こりやすい。業界団体が緩い組織、典型的には中小零細企業がそうである。中小企業での雇用慣行がどうしても劣悪になりやすいということと深く関係している。なお、全ての中小企業の雇用環境が劣悪だとは言いませんし、言えません。中小企業でも雇用環境が立派な企業はゴマンとはありますが、概して、劣悪なところと出会いやすいのも是また事実のような気がします。名目的な就業規定、サービス残業当たり前、社会保険って何?って言い出す会社、ワンマン社長、同族経営の会社、もう頭が痛くなる会社さんも少なくないように思うのですね。

     では、大企業がブラックでないかというと、大企業もブラックなところもないわけではない。ただ、大企業だと、課題あるいは不正行為が発覚した時にマスコミの餌食になって、その被害が大きくなりやすいから、おとなしくしている、というだけの場合は多いと思う。そういえば、最近、メグミ○クさん、地味に元の事件発生時のブランド、復権させてません?復権させたらいかんと言いませんが・・・。事件発生当時のロゴ、個人的には好きだったので、そろそろ戻すんだ、って思ってますけど。

    西部劇の保安官に見る
    包括組織がない問題

     包括組織がない、その組織との関連が弱いってことは、もう何でもできちゃう、自分が何やっても文句言われようがない(ミーちゃんはーちゃんなんかはボランティア型ゲリラなので、まさにこれ)となっちゃう。そうしたら、やりたい放題になっちゃいやすいんですね。誰も気にしないで生きていける。まさに49ers 西部の荒くれ者の世界で生きていける訳です。となると、全能感の塊になれちゃう。I am the law(西部劇の保安官の決まり文句。)になっちゃうんように思います。

     ところで、保安官制度の問題は、本来武装の上の公権力の執行者であるべき警察権が、組織ではなく、個人に完全に委ねられてしまう点なのだな。組織であっても、個人に法執行権がゆだねられており、この問題が起きるので、警察官世界では嫌われ者のIAB(内部監査室)が置かれている。この辺に関しては、映画「この森で、天使はバスを降りた」を参照。

     うまく運用できている間は問題がないのだが、うまく運用できなくなったときにこの種の包括組織がないことや組織自体の小ささは、負の連鎖を生み出していきやすい。これはウェブの世界でも、リアルでも同じ。

     より具体的な例でいえば、中小企業では、ワンマン社長に逆らう社員は退職させて終わり、ってできるし、教会なんかだと、陪餐停止、破門、絶縁、出入り禁止とかして、『以上終わり、乙』の世界になる。

    破門されたってしょげることないし
     あ、教会で破門・絶縁をくらってしょげている人に参考になる面白いお話があります。詳しくは『海の都の物語』って本で見てほしいんですが、ベネツィア社会とベネツィア人は中世のカトリック教会(教皇様)から何度か破門されてますが、破門されたことなんか、まーったく気にせずで生きていらっしゃった経験をお持ちの大変図太い神経のお持ちの方たちだったようです。まぁ、中にはおびえた人たちもいたでしょうが。こういう鈍感力は見習いたい、と思います。ヘンリー8世もこの種の鈍感力の持ち主だったようですし。まぁ、ヘンリー8世をどう評価していいのか、ミーちゃんはーちゃん的には、正直迷いますが。
     なお、破門っていうのは、excommunionといい、聖餐式に参加させないこと(陪餐停止)、聖なるパンを一緒に食べない、ということで仲間でない、ということを意味する語です。

    包括組織と公共圏の構築
     さて、単立組織というのは、エンジンと車輪が直結したような電気自動車のようなものなので、なんかやるときにはめちゃくちゃ、効率がよいのですね。それこそ時速100キロを4秒以下で達成できてしまうような感じがあります。

     特定目的だけを完遂したい、という時にはこのような単独行が実施できる組織というのは非常に便利な形態だと思います。その意味で、グリーンベレーとかデルタフォースとか、ゲリラ組織というのは、全権委任されて、適当にお前らやってこい、みたいな形で派遣される。もう、こうなればやりたい放題何でも出来てしまう。
     この種のゲリラ型の組織は、自分たちの目の前に見えることだけを前提に最大効果があることをやっちゃう部分があり、全体像が見えていなかったり、歯止めの利かない組織でもあり、適当な時期に回収が必要な部隊ではあるらしいです。そのため、この種の部隊には、賞味期間限定活用が付きものであり、無期限で作戦活動することは原則ないようです。

     無期限で作戦活動しちゃったのが、フィリピンでの小野田寛郎氏だったりします。戦争が終わっていることを知らず、一人で、大東亜戦争を続けちゃった感じがしますね。
     アメリカ国内で、一人ゲリラ部隊で活動すると、シルヴェスタ・スタローン演じるランボーになっちゃいます(そういや、今年のゴールデングローブ賞で外国映画賞のプレゼンターがスタローンとシュワルツネガーで、二人の英語がわからんというギャグを二人でやっていた。その映像はこちらhttps://www.youtube.com/watch?v=rdmKOitOuyA)。

    包括組織と公共圏
     で、全体像を考える組織というのが、おそらく包括組織であるように思います。この包括組織というのは、ある集団を包括し、相互認証しながら、その集団においての共通利益の保護と発展を図ることにより、その包括組織に属する個別組織の利益を図り、そのための個別組織間の調整を図る一種のアンブレラ(傘状)組織であり、そこでは集団討議的な対話が行われることもある場合、一種の公共圏が形成されているとみてよいと思います。このあたり、厚生経済学における公共性の議論とかかわってくるような気がする。

     具体的には、個別の集団で手に余る問題を集団的に扱うようなタイプの組織が、包括組織であるといってよいだろう。典型的には、厚生年金基金などの組織がそれに当たるように思う。自治体でいえば、個別の基礎自治体を個別組織とすれば、都道府県がアンブレラ組織に本来は当たるが、今の都道府県は国の行政運営の市町村への伝達組織になっている部分も多少はあるので、その傘下の基礎自治体と呼ばれる組織間で自由な対論が行われているか、と言われるとかなり怪しい。どちらかというと、その組織間の調整はしていたりはするみたいである。例えば、道路とか、鉄道とか、水道とかではあるけれども。

    包括組織を構成する
    メリット・デメリット

     この種の包括組織を構築するメリットは、共同化によるコスト削減と窓口の一本化と共通利益の追求である。ただ、この包括組織の構築には、デメリットがあり、本来包括組織であるはずのものが、傘下の団体の協力という形を介して支配組織となりかねなかったり、包括組織であることを忘れて、政治団体化していくことである。さらに、日本の場合、代表権者がはっきりしないので、なぁなぁになり、無責任体制がはびこる15年戦争末の帝国陸軍参謀本部状態を示す点は、課題として考えてよいかもしれない。
     ただし、包括組織が存在することで、少なくとも個別組織同士での問題解決(万人の万人に対する闘争 bellum omnium contra omnes 状態)ではなく、一応何らかの権威を持たせた組織のもとでの対論のプラットフォームができるので、アノミー状態の解消はまだ容易である。とはいえ、プラットフォームでしかないので、一抜けた、という状態になった場合、対論や調整は一時的な対論のプラットフォーム(公共圏)を相互で作るか、それができない場合、組織間の問題解決の対処に困ることになる。

    ローンレンジャーの問題と公共圏

     ミーちゃんはーちゃんは、これまでローンレンジャー的(一匹狼的生き方)をしてきた。個人的にはまずかったなぁ、と思っている。まぁ、これが可能であったのも、若く無知であった(若くはないが無知は今でも、かもしれない)からであるが、この生き方は、特定目的的に活動するゲリラとしては、十分であったとしても、社会とかかわっていく上で限界があったように思う。
     ローンレンジャーでいることで何よりまずいのは、だんだん、特定の方向性に頭が凝り固まっていき、柔軟性を失っていく。そして、外部から物を眺めて見る目、というのか、メタ概念で物事をとらえることができなくなっていき、内向き志向になっていき、概念の修正がきかなくなっていき、化石化が進む点があるように体感的には思っている。

     このことについて、ポスト・モダン世界のキリスト教 21世紀における福音の役割(この本は名著だと思う。元になった洋書はないものと思われる)という書籍の中で、マクグラス先生のご講演の一部が示されている。その中で、マクグラス先生は、伝統主義に関して次のように述べておられる。

     伝統には、「伝統主義者」という意味も含まれています。それは以前の世代のプレッシャーであり、私たちが以前の世代の人たちと全く同じように考え、行動し続けることを要求します。そのようにして、福音主義を16,18,19世紀の世界観に閉じ込めてしまうのです。「伝統」にどのような形であれ権威を与えることは、福音主義が死者と夢中歩行するようなことを強要することであり、それは現代のサンフランシスコで18世紀の服装をするのと同じほど滑稽なことです。キリスト教が人々からどのように見られているかに非常に敏感な時代に(中略)伝統への関心は全く場違いであるように思えます。伝統は同時代性に真っ向から対立するのです。マクグラス(2004 pp.82-83)
     自分の殻に閉じこもることは、死者と夢中歩行することを強要する、と言っておられる。ゾンビと踊るのは、ミーちゃんはーちゃんはご遠慮したい。なお、マクグラス先生は、伝統の重要性も以下のようにきちんと説いておられる。

     J.I.パッカーにとって「伝統」とは、聖書が過去にどのように読まれてきたかを考慮しながら、聖書を読む意欲です。それは長期にわたって存続するキリスト教信仰の共同体的側面に気づくということであり、多くの福音主義者たちの浅薄な個人主義に疑問を投げかけます。聖書の解釈は、一個人が識別可能なものを超えたものがあります。伝統とは、信仰における私たちの先人がどのように聖書を理解してきたかに積極的に十分な重きを置こうとすることです。それは、聖書解釈を含み、キリスト教信仰の共同体的性質を強く思い起こさせることになります。マクグラス(2004 p.83)

     つまり、現在のみならず、過去の人々(この場合は書籍となるが)を含めて多様な人々との中における交流と共同体の後世の重要性を説いておられると思う。さまざまな考えの人々と幅広く交流しながら、共同体を構成し、そして柔軟に生を与えられた時代に生きながらえながら、聖書を見つめなおしていくことだというのが、マクグラス先生のご主張の要旨であると思う。このためには、幅広く、様々な人々との関係の世界と対話に生きることが必要なのではないだろうか。

     ところで、ツイッターでもとくにFacebookでも、どうしても、付き合う人が似てきてしまうという傾向があるように思うし、リアルでもそのような傾向は生まれやすいように思う。であるとすれば、あえて、異質な人々との交流を通して、自分自身を見直す目を外部の人から求めることが重要なのではないだろうか。

     特定の人が固まっていて、同じような人々の中で対話している限り、議論や理解の幅が出てこないのではないかな。その議論や理解の幅を広げることを可能にするのが、公共圏というものだろうと思うし、そこに感情ではなく理性において対話を通して相互理解と理解の深化に取り組むことができるのではないか、と主張されたのが、ユルゲン・ハーバマス先生だと思うのだな。なお、日本語訳のユルゲン・ハーバマスの本を読むと、消化不良を起こすと思うので、それなりの覚悟は必要。英語の方が読みやすい。

     それこそが、包括組織の持つ意味だと思うし、包括組織における対論の意義だと思う。

    まとめ

     包括組織を形成するかどうかは別として、絶えず外部の人たちとのオープンで感情的でない理性的な多様性を前提として受け止める形での対話が必要かもしれない。この精神を持ち続けられるかどうか、そしてその対論を過去を含めた様々な人からなる共同体に求め、そして自ら自己反省的(哲学的反省)にに神のみ旨(それはすぐに単純な形でわからないことが多いと思う)を求めつつ(祈りつつ)、行為をなしていくことの大切さを土塵男(アダム)の末の一人として感じている。


    評価:
    ---
    ワーナー・ホーム・ビデオ
    ¥ 980
    (2000-02-11)
    コメント:ギルアデの油、の歌が最後のころで出てくる。アメリカの社会の狭さと息のつまりそうな田舎町で起きた悲劇を描いた名作。ベトナム戦争の影の部分が出てくる。閉鎖された教会が舞台の一部になる。

    評価:
    塩野 七生
    中央公論社
    ---
    (1989-08)
    コメント:しぶといベネツィア人の世界を楽しく読める物語。まかり間違っても学術書として読まないように。物語、って大書してあるでしょ。ほら、表紙に。

    評価:
    価格: ¥1,890
    ショップ: オンライン書店boox
    コメント:マクグラス先生の日本での講演録。福音をどうとらえるのか、福音主義、ファンダメンタリズム、科学と聖書との関係についての糸口がものすごくわかりやすく書かれている。お勧めの一冊。

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