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2013.03.13 Wednesday

福音派が生まれたころの世界むかし話(2)

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     アメリカ経由のゴチゴチの福音派が生まれた背景を簡単にまとめるのが、このシリーズの記事であるけれども、その前に、このアメリカの福音派の思想に影響を与えた建国の父祖たちの歴史を追わないと、なぜ、この人たちがゴチゴチなのか、ということが分かりにくいと思うので、少し追っかけてみたい。

     旅人さんのコメントにもあるように、もし、「聖書は、誤りなきことば」とするプロテスタント派であるとするのであれば、かなりのキリスト教の各グループが含まれてしまうので、福音派は、もう何がどうなっているのか、闇鍋状態であることと等しいと思います。その点で、さっぱりわけがわからない状況になっているので、一応、Theologian Trading Cardsに沿って、何回かにわたって、歴史的な背景をある程度わかりやすく書いておいてみようかと。ちなみに、ミーちゃんはーちゃんはアメリカ史が専門(一応、明石紀雄先生のアメリカ史概説の講義は受けたことがある)でもないし、アメリカキリスト教史が専門でもない、神学校に通ったことすらない技術屋なので、誤りが含まれている可能性が多分にあるが、ご意見をいただいたら、それは都度修正をするということで、ご対応したい次第。お気づきの点はコメントにてお願いしたい次第。

     福音派の定義は、まぁ、聖書をどう考えるのか、という点であるのでは、という旅人さんの疑問のようであるが、それだけとも言えないので、実は困るのですね。そういうわけで、福音派をとりあえず作業仮説的に定義するために、一番簡単なZondervan発行のTheologian Trading Cardsでの登場人物に限るようにしようかと。

     まず、Theologian Trading Cardsの中で、福音派で一番古いのは、アメリカの福音派の祖父みたいなJonathan Edwardsである。

     Jonathan Edwardsはアメリカの改革長老派の牧師兼神学者であるが、彼は、ニューイングランドに入植したピューリタンたちの社会で、その2世、3世、4世が出始めた時代の説教者であり、神学者であり、前回も触れたように、大覚醒と呼ばれるリバイバル運動との関連で知られる人物である。

     いきなりジョナサン・エドワーズをやってもいいのだが、その背景をまずご説明しないと、なぜ、そうなるのか、ということが分かりにくいと思うので、今回は、ジョナサン・エドワーズ前史をしたいと思う。

     では、ピューリタン、ピリグリムという人たちがどういう人であったのか、ということを知っておくほうがよいだろう。ピューリタンは、ごくごく荒っぽく言ってしまうと、イングランドの国教会に対して異議を唱え、英国内で肩身の狭い思いをしたカルバン派を中心とする国教会から分離しようとした人々で、その一部が、イギリスを出てアメリカなどに移住していった。この移住していった人々を、アメリカ史では、ピルグリム・ファーザーズと呼ぶことが多いようだ。そもそも、非常に自分たちの信じるキリスト教(カルバン派的なキリスト教)を守ろう、そこに価値を見出した人たちが、その価値を保持できる形でコミュニティ形成を目指したのがニューイングランド入植地なのですね。これが。

     つまり、もともと、ガチガチの人たちが、ガチガチの人(非常にきよい生活にこだわり、悪(ないし悪魔)が入り込まない様なきよい人)たちだけの社会を作ろうとして、ボストンやマサチューセッツ州を中心とした地域であるニューイングランドと呼ばれるところに希望を求め、キリスト者のみからなるコロニー(植民地)を作ろうとする中で、チャーターと呼ばれる市民憲章をもちながら、生き延びていこうとした、という神話がアメリカ人にしみ込んでいる。つまり、アメリカの国家の成立において、ガチガチである(倫理的に高潔であり、高い道徳律を保持している)ことが特定の価値をもっているみたい、ということなのである。この種の伝統は、旧東部13州でいまだにあるように思う。特に、うそつきは嫌われる。

     以下の写真は、コロンバイン高校銃乱射事件(よくご存じでない方は、マイケル・ムーア監督作品 ボーリング・フォー・コロンバインをご覧あれ)で有名になったコロンバイン高校の正門にある学校の標語である。Home of the Rebels(反逆者たちの住み家)というのが学校の校是らしい。日本の学校では考えられない標語であるが。最初にこの標語を映画ボーリング・フォー・コロンバインで見たときは、正直ぎょっとした。

    コロンバイン高校の標語は、こちらを参照。

     あけっぴろげにHome of the Rebels(反逆者たちの住み家)と普通の高校が校是として書くあたりが、アメリカの建国の歴史と深くかかわっているのだね。つまり、アメリカにメイフラワー号にのって、大西洋を渡ってきた人たちは、大英帝国の圧迫に逆らって、というよりは、当時の英国国教会の堕落に異議を公言し、異議申し立てしたあげくに迫害され、亡命してきた人たちというか、そこを飛び出してきた人たちなのだな。そもそも、この段階で、高潔な精神性ゆえのRebels(反逆者たち)だったのだ。これが。その癖、ニューイングランド(自分たちこそが真の英国精神を体現している場所であるという意図もないわけではなさそうだが…)とか自分たちが住む地域につけるっていう、複雑というよりはむしろ屈折した残念な人たちであること、さらに、自分たちの父祖の国としての大英帝国と独立戦争として武装蜂起することになる。とはいえ、いまだにアメリカ人は、大英帝国に対する微妙な憧憬がどこかにあるように思う。

     おそらく、この高潔性が、実は、旅人さんがおっしゃる「掟」というか、聖書の文言最優先とつながっているように思う。その意味で、スターウォーズのDeath Starに向かって突入するような無謀さを持つヒロイズムが、アメリカ人としては好まれるように思う。

     このような無謀さに関して、独立戦争時のことを題材にしたのが、最下部のリンクで紹介するパトリオット(日本では航空自衛隊が運用中のPACIII、パトリオットミサイルのことではない。メル・ギブソン演じる映画。カリフォルニア人だと、ペイトリオットに発音は近い。The Patriot)で理想化された姿で語られていて、アメリカ人は、これが独立戦争の実際だ、と思い込んでいる。ま、アメリカ人のためのアメリカ人による(メル・ギブソンは、一応アメリカ人・オーストラリアで映画デビュー)アメリカの映画であるからしょうがないんだけど。大英帝国側の見方は全く無視された映画である。

     イギリスを離れた人たちが作ったメイフラワー憲章の精神がニューイングランドの末裔であるアメリカを覆っているという意味で、そして、大英帝国から武装蜂起によって独立を勝ち取ったという意味で、かれらは、Rebels(反逆者たち)なのである。そしてそれを称揚する神話がアメリカ合衆国の精神として存在するように思う。 

     ちなみに、アメリカの銃社会を支える憲法修正第2条は、人民がミリシアと呼ばれる人民軍を作る権利を保障した条文であるが、それから派生して、人民が武装することの権利保障の背景としてもちいられるが、その背景には、アメリカ独立の際に武装ほう起した人民軍の背景がある。

     アメリカ建国の神話の一つであるが、11月のThanksgivingのたびに繰り返される合衆国の建国の神話だけにアメリカ人の精神に毎年のように繰り返し繰り返し刷り込まれているように思う。その意味で、自分たちは、ピューリタンであるかも、というような思い込みだけが刷り込まれている可能性が高いように思う。ドイツ系のユダヤ人の知り合いがいるのだが、彼らの不満は、今のアメリカ社会と公教育が非常にプロテスタント的なキリスト教の影響を強く受けている点である、といっておられた。その話を聞きながら、そうだろうなぁ。The Peanuts(スヌーピー)も、The Simpsons(シンプソンズ)でも、繰り返し触れられる。

     そもそも、亡命したり、武器をもって武装蜂起するほどのゴチゴチの人(他人に対する許容度の低い人)たちが作った国家がアメリカ合衆国の精神とアメリカのキリスト教に還流して流れているように思うのだなぁ、これが。

     なお、独立戦争の時にフィラデルフィア(クラフト社のクリームチーズではない)であわてて作った、軍旗がアメリカ合衆国人が愛してやまないことになっている国旗(Stars and Stripes)になっている。The Patriotでは、このでかい旗をもって走るシーンが出てきて、なかなか印象的。

     その意味で、アメリカ人にはそもそもがちがちの人たちというのか、自分たちをRebelsと呼ぶ、思い込みの強い、屈折した人たちが多いのは間違いない。それが高校の看板に掲げるほどの理想なのだから。

     ということで、ジョナサン・エドワーズが生きていた社会の背景とジョナサン・エドワーズが生きたニューイングランドで醸成されたアメリカの建国の精神について、なぜ、アメリカ人が自称Rebelsと呼び、西部劇やアウトローが大好きなのか、についてのご紹介。この辺、ビリー・グラハム(ウィリアム・フランクリン・グラハムII世)のものいいにも影響しているように思う。

     このような歴史的背景が、アメリカ経由の福音主義神学に大きな影響を与えているのだが、こういうことをあまり分かりやすく書いたものがないので、ちらっと書いてみようかと思ってます。コメントいただけたら、対応致します。少し、お時間いただくかもしれませんが。



    評価:
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    Zondervan
    ¥ 2,087
    (2012-11-20)
    コメント:これまでの神学者やキリスト教関係者の関係が分かるトレカ。並べ替えができたりするので、便利。

    評価:
    ---
    ジェネオン エンタテインメント
    ¥ 1,800
    (2003-08-27)
    コメント:コロンバイン高校銃乱射事件とアメリカの住社会の背景について描いたドキュメンタリーの名作。マイケルムーアがうっとうしいっちゃうっとうしいが。

    評価:
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    ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
    ¥ 1,480
    (2001-02-23)
    コメント:アメリカ人が見た、アメリカ独立戦争時の一つの理想形としての一家の姿。

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