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2012.11.21 Wednesday

読んだので、書いておこうかと。読みながら、気分が悪くなったけど(第4回 最終回)

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      前回まで、アメリカ人の福音派・聖書根本主義者のテレビ伝道者主催のイスラエル聖地旅行についての部分をご紹介してきましたが、今回は、イスラエルという国家や、ユダヤ人シオニストと福音派・聖書根本主義者との関連についての部分をご紹介していこうと思います。



    読んだので、書いておこうかと。読みながら、気分が悪くなったけど(第2回)…



     一応、今回で、この本のご紹介は終わりたいと思います。

     まず、1985年にバーゼルで開かれたキリスト教徒シオニスト会議での著者のハルセルさんによる参加記録を引用してみたいと思います。

     スピーカーたちは、ホロコースト、つまりナチスによるユダヤ人迫害で世界中が同情し、ユダヤ人国家建設の道が開かれた経緯を話した。だが彼らのだれ一人として、イスラエル人、キリスト教徒の別なく、核時代においては私たちすべての人類が何らかの形で隣人として生きるすべを学ぶ必要があることには、まるで言及しなかったのだ。アラブ人、イスラエル人、すべての敵同士が融和と平和にこぎつける方法を提示して世界に希望を与えるどころか、どのスピーカーも自分たちに危険が迫っているとするあのユダヤ人に昔からつき纏って離れない恐怖を一層強めることしか口にしなかったのである。(同書 p199)

     この時代の危機意識、というのはよくわかるのですが、また、ここに挙げられている男性的な聖書理解というのか、極めて単純化された福音書の主張からやや離れた聖書理解であり、その結果「天国に行けるかどうかが重要」という危機意識を起点として福音が語られることが多いので、その延長線上でイスラエルの危険を語るのは、精神構造としてミーちゃんはーちゃんは理解できないわけではないのですが、どうも、福音書のイエスの主張(特に、山上の説教の精神)と合わないのではないか、と著者のハルセルさんは、おっしゃっておられるようです。

     この種のユダヤ人の危機意識の構造につして、イスラエル人のドキュメンタリー映像作家が制作したDefamationという映像資料があるのですが、これは、アメリカ国内のみならず、世界各地でのユダヤ人人権問題への対応組織についての行動について、記録されています。この本を読んだとき、まずこの映像資料のことを思い出してしまいました。YouTube にだれかがアップしているので、全部をここ(http://www.youtube.com/watch?v=TOUlJLrQ3sQ)で見られます。ただし、ほとんどが英語ですが、英語が割とゆっくりしているので理解はしやすいと思います。DVDは英語版のみかな。

     パレスティナ人市長を殺害し、岩のドームを破壊しようとした科で有罪宣告を受けたテロリストの首魁モシェ・レヴィンゲール・ラビは、彼自身と無数の仲間たちのシオニズム感をこう定義している。
     「シオニズムは神秘主義だ。神秘的メシア観の根を切れば、それは枯れてしまう。シオニズムは合理主義的な言葉では考えられない運動だ。現実の政治、国際関係、国際世論、統計、社会胴体などの言葉では考えることができない。シオニズムは神の戒律のことばでしか考えられないのだ。重要なのはただ一つ、創世記に記されているアブラハムに対する神のお約束なのだ。」(同書p.215)


     イスラエル人シオニストが、シオニストを神秘主義であると言っておられる。あー、出た。神秘主義。神秘主義であるが故に検証できないし、検証する気もそもそもないみたいなんだなぁ、とは理解した。

     合理主義的な言葉で考えられない、ということは、基本的に対話の拒否なのである。イスラム過激派とまったく同じ精神構造をしていて、それがゆえに過激派同士が武力闘争しているのかなぁ、と思ってしまった。彼らにとっての他者とのコミュニケーションは、合理的な言葉によるものではないらしい。合理的な言葉で考えることができない、という以上、むき出しの暴力によるコミュニケーションにならざるを得ないのだろう。これは、だれにでもわかるから。

     日本でも、過激派同士、特に武装闘争派同士の武装闘争が1960年代末から1970年代に頻発したが、合理的な言葉で考えられなかったのかもしれない。冷静さを失った神秘主義者ほど怖いものはないのだろうと、この部分を読みながら、改めて実感した次第。

     ユダヤ人シオニスト指導者たちがリベラル派による指示から保守派のキリスト教徒に乗り換えた理由について、次のように書いている。

     
    NCC( National Council of Churches)はおよそ4000万のキリスト教徒を代表している。福音派・聖書根本主義者もほぼ同数だ。しかしNCC系列の4000万信徒はばらばらにしかイスラエルのアラブ領土占有を非難しないからほとんど取るに足らない。しかし福音派・聖書根本主義派の4000万派一致団結して、神自らがイスラエルに奪える限りのアラブ領土はすべていかなる土地でも奪えと欲しておられるものと、心底から熱心に信じているのだ。これでは到底太刀打ちできまい。
     イスラエルとユダヤ系アメリカ人のリーダーたちは、聖書根本主義派の狂信的戦闘性に匹敵する迫力が主流派キリスト教徒には何もないと気づいている。根本派にとってイスラエルは、自分たちの経済と直結した本質的な宗教的関心の対象なのだ。(同書 p291)


     これは、ハルセルさんの分析であって、ミーちゃんはーちゃんの分析ではありません。ただ、ミーちゃんはーちゃんは軟弱なFundamentalist(多分、下で紹介する本で、J.I.Packerの言う意味でのFundamentalist)なので、狂信的戦闘性を持っていませんし、すべての聖書根本主義派に属する人々が狂信的戦闘性を持っていないことは確かですが、アメリカではそのかなりの部分が退役軍人や軍関係者であったり、軍事産業と何らかの形でつながっていたり、経済的な面で軍事産業との関連の影響を受けやすい人々であるので、あくまで、アメリカという国家では、ですよ、そのアメリカ合衆国での国家という枠内にお住まいの聖書根本主義者の方々の中には、経済(というよりかは、彼らのお財布)と直結した宗教的な関心を持つ人々がおられることは、そうだろうなぁ、と思います。

     現実に2002年ごろにアメリカにいたころ、Evangelical Free Churchであるとおっしゃっておられる教会に通っていたのですが、そこで、イラク戦争反対、というひそひそ声は聞こえても、公にそのことを教会内で主張するのははばかられる雰囲気が漂っておりましたです。はい。なんでそんな戦闘的なの?とも聞けなかったですね。

     近年のアメリカ英語自体が、基本的にやや戦闘的な言語であり、非常にインパクトがあることに価値を見出す言語の形態をとっておるという印象を持っておりますが、そのあたりも影響しているのではなかろうか、と思います。

     以前、大学院生相手にアメリカの学校で1990年代末に教えておりましたときに、同僚だった女性の先生に、「あなたたちはいい人なのに、なんで言葉はそんなに戦闘的なの?」って聞いたら、「・・・・」と一瞬彼女が凍ってしまったことを思い出します。彼女は、本当にいい人だったんですよ。まぁ、反資本家的なところがございましたが。

     戦闘的といえば、続く部分でこのようにハルセルさんは書いておられます。

     親イスラエル派がいわゆる「男性的キリスト教(注 ハルセルさんが言う聖書根本主義者)」と言う厳格な宗派に鞍替えした三番目の理由は、双方のリーダーがともに兵器増産、軍隊増強、軍事力で目標を達成するやり方を信じ切っている点だ。(同書p232)


     先にも書きましたように、軍関係者、元軍関係者、軍事産業関係者の方も、このグループには確かに少なくないので、ある面、軍事力で目標達成するやり方を信じ切っているというのはあると思います。企業などでも生産力向上、合理化のツールとして使われておりますオペレーションズ・リサーチ(まさしく作戦研究)は、まさしく第2次世界大戦中、日本軍やドイツ軍と軍事力で先頭し、被害を最小化しながら、戦闘に勝利する為の技術から発達した技術なのですね。

     パワーポイントとかを使ったプレゼンテーション技術は、もともと、軍の将軍だの大統領を含め大統領側近の皆様に作戦の概略を示し、納得してもらうために生まれた技術に端を発しているので、これまた軍と直結しているのですね。

     あと、宇宙開発技術では、アポロ計画に使われたロケットは、大陸間弾道ミサイル技術の延長線上にございますですし。

     その結果、もともと、反ユダヤ主義→反差別的で、リベラル色の強かったアメリカのユダヤ人に何が起こったかについて、ハルセルさんは次のように書いています。

     イスラエルがアメリカの植民地的軍事国家に変貌し、ウルトラ右翼のキリスト教徒と同盟を結んだために、リベラル派のユダヤ系アメリカ人は帰趨に迷い、居心地の悪い思いをしている。(同書 p.240)

     個人的に法廷論争が好きで見ているLaw & Orderで出てくるユダヤ系NY市警察の刑事のMunchと呼ばれる警察官の設定(http://en.wikipedia.org/wiki/John_Munch)は、リベラルということになっている。彼は、一応、現代ヘブル語がしゃべれるという設定になっている。このマンチおじさんなんかや、ニューヨークのジャーナリストや法曹関係者たちが、結構居心地の悪い思いをしているのだろう。Law & Oder SVU の番組内では、Hate Crime(差別による犯罪)も扱うので、結構ユダヤ人問題が出てくることが多い。このあたりも、先にご紹介したDefamation(http://www.youtube.com/watch?v=TOUlJLrQ3sQ)を見てもらうと、なんとなくその実情がご理解いただけるか、と思う。

     まぁ、もっと生々しい表現や記述、厳しい表現が本書内では繰り広げらておりましたが、ここにご紹介した一部(まだ、それでも穏健な記述が中心)でも、十分、気持ち悪くなったり、鼻から牛乳経験された方もおられたかもしれません。そうなられた方には、こころからお詫び申し上げますが、ハルセルさんには、こう見えていた、ということで、ご理解を。本当はもっとショッキングな内容Jel-USA-lem(エルサレムはJerusalemと英語でつづるはず)とか満載でしたから。

     最後に、何人かのユダヤ系の方々のご発言がこの本にご紹介されていたので、それを紹介してこの記事を閉じたいと思います。

     有名なバイオリン奏者エフディ・メニューヒンの父モシェが精神的避難場所を求めて新たに作られたユダヤ国家に移住したものの、シオニストが「神ではなく自らの権力」を崇拝しているのを知ると政治的シオニズムにとって代わられた預言者のユダヤ教が「悲惨なデカダン」に陥っていることを嘆いている。
     エルサレムの『ポスト』紙のインタビューで、有名なユダヤ系アメリカ人のバイオリン奏者アイザック・スターンは、シオニズムとシオニスト国家を「わが汚されし夢」と呼んでいるのだ。(同書p212)

     このあたりの様々な人が直面する現実と様々な人が抱いた理想の違いをどう考えるのか、Fundamentalismの系譜に属すと分類されるキリスト者として自己反省的に考えないといけないなぁ、と思ったことをお伝えして、この記事を閉じます。

     ちなみにメニューヒンの演奏(あ、グレン・グールドと一緒)は古い白黒動画で、画質は少し、ひどいですが、こちらで。(http://nicoviewer.net/sm16115603)

     アイザック・スターンはこちらで(http://www.youtube.com/watch?v=P8Oo9m5s4Ss)。(そういえばセサミストリートに出ていたのを見たことがある[http://muppet.wikia.com/wiki/Isaac_Stern])確か、アイザック・スターンは、映画のMusic of the Heart(http://www.youtube.com/watch?v=jHD5tjCrdws)にも出演していたように思う。見た瞬間、それこそ、ビックらこいたけれども。

     ということで、これらの映像をお楽しみくだされ。ミュージック・オブ・ハート、アメリカの音楽教育の現実を描いていたようにも思います。子供たちが言っていたカリフォルニアの小学校では、音楽教育、いっさいなかったなぁ。


     ところで、日本の方で、羽村の風、というブログをお書きになった方が、これらの戦闘的なキリスト者の問題について、既にふれられておられたので、関連分だけ、ご紹介。特に、キリスト教が倫理化していくことに伴う問題を紹介しておられるジーザス・キャンプを紹介した「原理主義キリスト教」再考は秀逸。


    「原理主義キリスト教」再考

    「正義の戦争」を考える

    いま、改めて「聖戦論」を問う



     ま、そんなこんなで、こういう戦闘的なアメリカ人のキリスト者たちが、いたということのご紹介。実は、これが間違いじゃね?と言っているアメリカ人の方の記事(日本語変換)を次回以降ご紹介。

     「正義の戦争」を考える、で出てくるWayne Grudem さんの問題も、実は次回以降、3部作構成でご紹介します記事にも出てきます。本職の神学部の先生だけあって、聖書解釈の中からかなり明確に、それも議論に用いられる部分の解釈の問題として取り出しておられます。羽村の風の方の論点とアメリカの神学部の先生の論点は、極めて共通していますのが、実はアメリカで、このことを正面切って言っていることがすごいので、次回以降は、こちらをご紹介いたします。



     お詫びと訂正

     ご紹介したブログのお名前を間違えておりました。こころからお詫びして、訂正申し上げます。

     正 羽村の風
     誤 羽室の風

    謹んで訂正いたします。ご指摘いただきました、ヤンキー牧師先生には、心より御礼申し上げます。


    評価:
    Yoav Shamir,Yoav Shamir,Morten Højbjerg,Karoline Leth,Knut Ogris,Nynne Selin,Sandra Itkoff
    First Run Features
    ¥ 1,127
    (2010-05-18)
    コメント:イスラエル人監督が作成したアメリカ国内での反ユダヤ主義対抗団体の行動についてのドキュメンタリー映像。ユダヤ人の意識とアメリカ人の意識のギャップが大変興味深い。

    評価:
    J. I. Packer
    Eerdmans Pub Co
    ¥ 821
    (1984-07)
    コメント:パッカー博士によるFundamentalismの理解に関する本。冷静に書かれていて、非常に好感が持てました。

    評価:
    マリアンヌ・マッダレーナ,パメラ・グレイ
    ワーナー・ホーム・ビデオ
    ¥ 991
    (2012-04-04)
    コメント:アメリカの公立学校における音楽教育の位置づけなどがよくわかる。それから、アメリカの音楽家のアウトリーチに関する考え方の一端が現れているかも。

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