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2011.12.24 Saturday

幸せがおカネで買えるワケ アメリカの家族の形

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     この前、たまたま、衛星放送をHD版にアップグレードしたら、日時限定で無料サービスが付いてきたので、WowWowを見ていたら、「幸せがおカネで買えるワケ」という映画をしていた。なんとなくタイトルに惹かれて見ていたのだけれども、これがむちゃくちゃ面白かった。表面的な意味で見ていると、面白くもなんともないのであるが、アメリカで生活した経験があると、これって本当にそうかもなぁ、とミョーに思えてしまうところが随所にある。

    この映画は、現代アメリカ人の生活と、現代アメリカ人の家族関係、現代のアメリカ社会の問題をキョーレツに皮肉った隠れた批判を行っている、その意味で、一種上質なブラックコメディになっている。あまりに面白くて、眠かったのにもかかわらず、つい2時間、引き込まれるように見てしまった。アー面白かった。

     消費生活が重視型のアメリカ人、他人が持っているものがいいと思うとほしくなったり、自分の支払い限界を超えて物を購入したり、家族といいながら、個人主義が徹底したあまり、単なる与えられた家族の役割としてのペルソナ(仮面をかぶった時の役割)を果たす同居人の集合体になってしまっているちょっとおかしな家族の姿をうまく描いていた。アメリカのどこかの町には、この種の家族に似た家族がいるかも、と思わせるような映画であった。

     このペルソナの問題は、キリスト者においてもあると思う。このペルソナと本人自身の実態がずれてしまったときの悲鳴が、キリスト者2世・3世問題でもあるのではないか、とふっと思ってしまった。(あー、もう2世・3世問題から離れる、と決めたのにぃ)

     閑話休題。映画の話に戻そう。

     企業から販促を依頼された企業(たぶんコンサルタント会社かなぁ)が、全くの赤の他人を4人集め、その世代に売り込みたい商品を日常生活で使用させ、見せびらかせることによって、売上を上げさせようとするための疑似家族(Pseudo-Family)を形成させ、その疑似ファミリーとその周辺の人物が巻き起こす、悲喜劇【中には笑えないものもある】を取り扱った映画である。ディズニー映画ではないので、死亡者が出たりするところや、裸のシーンがあるので、子供と一緒に見られない映画であるが、非常に皮肉の利いた映画になっている。

     というのは、この疑似家族の生活スタイルが、アメリカ人の生活そのものであるからだ。以前、このブログで紹介したWhat would Jesus buy?を紹介した記事でも紹介したように、消費することによって、それもクレジットカードを限度枠いっぱいまで使い切ることで生きるところに追い込まれ、虚栄(見栄)を追い続けている人々への痛烈な批判となっているからである。

     まず、この疑似家族(というよりは似非家族)の食事の姿が面白い。基本的に食べているものが、朝食は、シリアルに牛乳かけたものだし(あ、これ、まずいわけでは決してない。そこそこパリパリ感にはまるところはある。)、夜は夜で、TV Dinnerと呼ばれる一人で食べれるセットメニューになった冷凍食品だったり、デミ・ムーアがしている、この疑似家族の母親役が食べている夕食は、プロテインバー(日本だと、ソイジョイとか、カロリーメイトが有名)だったりする。そういえば、知り合いの大学教員に、夕食は基本的にNatural Madeみたいなサプリメント錠剤だけ、という剛の者もいたことを、ミーちゃんはーちゃんは思い出した。リアルにこういう人がいるのもアメリカ。それをみんなで、食べるのでもなく、テーブルに向って黙々と個人個人が食べるのである。Demi MoorがポップコーンやChipsだと思うのだが、ジャンクフードを一人ベッドルームでPCを触りながら、また、書類をめくりながら、ぼりぼりやるシーンが二回くらい出てくるが、これまた、アメリカである。

     また、この疑似家族の構造で、一番のボス(チームリーダー)はだれか、というとこの家族の母親役(Demi Moore)である。アメリカでは、父親がリーダーということに一応文化的、思想背景的にはなっているが、実態は、母親がリーダーであることが多い、という強烈な皮肉になっている。この疑似家族のリーダーは、絶対に母親役であるのが重要なのである。

     ところで、父親役が社会的通念でもあるペルソナに従って(この辺りが2重に皮肉になっている)、リーダーとしての雰囲気をうまくだしつつ、「一応家族なんだからさぁ、もうちょっと家族をまとまろうよ」と言いだすと、母親役のDemi Mooreがいらんことをするな、と言い出し、挙句の果てに、家族をUnitと言い出す始末。ちなみに、Unitとは、字幕では、チームと訳されていたが、実際には米軍用語で、最小戦闘単位を意味する。つまり先遣小隊、くらいの意味なのである。しかし、Unitねぇ。

     昼間は昼間で、それぞれの仕事(?)である他人に見せびらかせ、他人に買いたい、お金を使って、理想と見えるものを手に入れたいという衝動を起こさせることに励んでいる。母親役のDemi Mooreはネイルサロンや、ヘアサロンに出没し、地域社会のネットワークのハブになっている人を捕まえる。それで、自分という存在ではなく、自分が身につけている商品を受け入れさせることに血眼になる。父親役は父親役で、プレゼント用の宝飾品や、ゴルフグッズ、高級自動車(Four Silver Ringsといったらわかりますよね。よく怒らんかったなぁ。)を見せびらかす。長女役は長女役で、女子高生に服飾品や、化粧品を使わせたり、携帯電話(スマートフォン、ブラックベリータイプ)を見せびらかしたりしている。長男役は、ゲーム機や自動車(カリフォルニア州では、保険料金をバカ高い金額さえ払えれば、高校生でも自動車で通学できるし、その時にどんな車に乗るかが、彼女ができるかどうかの分かれ目になるので、非常に重要とされる。高級外車(メルセデス・BMW・日本車では、ぎりぎりレクサスシリーズ、できれば、レクサスでもコンバーチブルが望ましい)かアメリカ車だと、ガソリンを捨てて走るハマーとか、リンカーンのコンバーチブルタイプとか、ビンテージスポーツカー(特にムスタングやカマロの60年代型など。間違っても、フォードの農作業に使うピックアップトラックに乗ってはいけない。完全に田舎者扱いされる。)がよいとされる。日本車は、基本馬鹿にされていた。特にカローラ、シビックあたりはおもちゃ以下の扱いである。この乗っている車で魅力的に見せかけようとするあたりがもうすでにおバカであり、「おまえはすでに死んでいる」(ケンシロウ君の声を想像してね)状態であるはあるとミーちゃんはーちゃんは思う。そもそものっている車で女の子と仲良くなろうという発想自体が発想の貧困であると思うのであるが。また、それに乗ってくるおバカなホルモンドバドバァ!といった感じの女子高生も少数ではあるが、現実にそれも確実にアメリカ社会にはいるのである。まぁ、似たような方々は、日本の高校生にもおられるが。なお、大多数の日本の高校生が堅実であるように、アメリカのティーンネイジャーの半分くらいは、堅実である、とは思う。

     ホームパーティのシーンがまたすごい。基本、買ってきた冷凍食品を解凍させ、それも、外部業者(なぜか、ヒスパニックアメリカン)に皿に盛らせるだけ、ということが出ていたが、アメリカに行ってみて、なんでアメリカ人がホームパーティが好きで、ホームパーティを気楽に何気なくできるのか、と思っていたが、その背景には、膨大な冷凍食品市場とその製品群の存在があるのである。

     アメリカには、Costco(お世話になっているので悪く言いたくはないが)やTrader Joe's(ここの冷凍食品は比較的おいしい)、Target・Walmartなどには、大量にパーティ用の冷凍食品がある。この映画の中では、冷凍食品の寿司(スゥシィーと発音する)が出てきたのは、びっくりした。Google 検索してみたら、実在した。

    http://www.21food.com/showroom/506458/product/frozen-sushi-set.html

    参った。

     また、アメリカには、この手のパーティを請け負う専門のケータリング業者がある。そのケータリング業者については、Big Moneyなんかにも出てくる。

     もう、ここまでくると徹底的にアメリカの現代社会の家族の在り方、コミュニティのあり方をバカにしているのか、と言いたくなるほど徹底的に批判している。

     この似非家族の隣のご夫婦が哀れである。この似非家族の見せびらかしたゴージャスな家具や、パーティ三昧の生活、虚栄の生活にあこがれ、より大きなもの、より高いものを求めた結果、当初、奥さんを喜ばせ、一瞬夫婦関係が良好になりかけるのだが、結果的に無理な消費生活がたたり、信用枠いっぱいに使い切ってしまったために、クレジットカードが使えなくなり(業界用語で、Maxed Out与信枠の超過)、家を手放さなければならなくなり、そして、最後にご主人は、似非家族が見せびらかしたテレビ付きの芝刈り機(これ、本当にあるのではないか、と思ってしまった)に自身の体を巻きつけ、入水自殺してしまうのである。もう、悲劇的というしかない。

     まぁ、この事やらほかのことに腹を立てた夫役が、この家族は似非だ、と地域の周辺住民にバラして一家崩壊となっていくのだが、それとても、ねぇ、と思ってしまった。

     その意味で、この映画、質実剛健であった骨太のアメリカ社会への鎮魂歌になっているように思う。あの質実剛健であったアメリカ文化はどこに行ったのか、ということを示して見せた、ブラックジョークの利いた鎮魂コメディといっていい(そんなものがあるとすれば、ですけれども)。

     結局、Demi Mooreとその夫役は普通の夫婦にどうも最後にはなりそうということを予感させながら、エンディングを迎えるのであるが、その途中で、この夫役がDemi Mooreに言うシーンのセリフがすごい。「いつまで、あなたはこの仕事を続けるのだ。いつまで、他人をだまし、ものを買わせ続けるのだ、あなたは、いつまで高校生の母親役が務まると思うのか、何人偽の夫を変えれば済むのだ、あなたが年をとった時、だれと一緒にいるのだ、その時もまだ、ものを見せびらかし、売り続けるのか、死ぬとき、そばにて手を握ってくれるのはだれか」というのである(スクリプトを手に入れていないのと、半分うとうとしながら聞いていたので、正確ではありません。ご容赦を)。強烈な皮肉である。実際にアメリカ人家庭の離婚率の高さや訴訟問題の多さと崩壊した家族間関係などを暗に批判している。スッゲー皮肉、と思ってしまったのである。

     一般に若いお姉ちゃん向けの映画では、スリムな女子高生しか出てこない(ゴシップガールやグリーなんか)が、この映画では、結構、ふくよかな、という基準をはるかに超えたと思えなくもない女子高生も出てくる。このあたりのこだわりが、余計にリアルさを感じた。

     さて、この映画を見た日の朝の朝刊の一面見出しが、これまたショッキング。米独でマイナス金利という記事である。マイナス金利といっても、短期インターバンク(銀行間取引)市場というマイナーな市場での出来事である。このことは、自国通貨に対して、自国の民間銀行から、この通貨には信用がない、ということを明白に言われた、ということである。つまり、自国の通貨は、紙くずとは言わんが、あまり信用ならない、だから、もちたくない、借りるためのコストは払えない、と銀行が言っているようなものなのである。アドベントの季節に、メサイアが来ることがくる日を待っていたFederal Reserve(連邦準備銀行)をはじめとする中央銀行の職員さんたちは、恐怖の大王が突然やってきた、という感じではないか、と思う。

     これも、それも、アメリカの家計が消費に狂い、Maxed Outしているアメリカ経済のおかしさを金利という形で露呈させたことにすぎない。まさに、この映画が批判していたことが銀行間市場でも金利を介して認められたということだと思う。

     さてさて、この映画、オリジナルタイトルは、The Joneses(ジョーンズ家の人々)というタイトルであった。Jonesというのは、Indiana Jonesに見られるように、ごく普通の名前なのである。日本でいえば、田中さんや前田さんのような名前である。どこにでもありそうな、ということがこの映画のポイントである。

     この映画、評価をあちこちで見たが、あまりよろしくない。そりゃそうでしょう。アメリカ文化という、アメリカ現代社会という「ものがたり」(Narratives)を共有できない人々にとっては、どこが面白いん、そんな変なこともアメリカならあるかもね、という程度の映画に見えるのだと思う。しかし、アメリカ社会のおかしさ加減に気付いている人々にとっては、まさしく、「あるある体験」であり、「あるある探検隊、登場!」といった感じの映画である。アニメ番組のシンプソンズでは、意図的にそれを示すことがあるので、あの番組が好きだし、それを見て、思わず笑ってしまうのであるが。

     家族関係、そして、現代社会を痛烈に皮肉った名作と、ミーちゃんはーちゃんは思ったのでした。なお、性的な関係の乱れもきちんと扱っていましたが、紹介するのはやめました。あまりに、ミーちゃんはーちゃんにとってもおどろおどろしすぎたので。
    評価:
    価格: ¥1,000
    ショップ: HMV ローソンホットステーション R
    コメント:アメリカで過ごすとわかる痛烈なブラックコメディ。豊かさとは何か、家族とは何か、を社会派でもなく、コメディでもなく描いているが、確実にブラックコメディといえる作品

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