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2011.11.15 Tuesday

天国と地獄についてのユニークな本

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    いま Rob Bellという人の Love Wins という本を読んでいる。


    はちこさんも読まれたらしい。もう少しで読み終わるが、著者の天国理解というか終末理解に完全に同意するものではないが、非常に示唆的な本である。神学書、というよりは、どちらかというと詩集に近い部分がある。

    これ、翻訳難しいだろうなぁ。翻訳できたとしても、日本では市場性がないから、この本の翻訳の企画があったとしても、それはとなるかもしれない。(キリスト新聞社さんで出版とかしないかなぁ。)なお、この本には、ニューヨークタイムズのベストセラー本になったらしい。そんなシールが張ってあった(日本のアマゾンから取り寄せ版)。

    この本の背表紙が、面白い。
    -----------------------------------------------------------

    "God loves us.
    God offers us everlasting life
    by grace, freely, through no
    merit on our part.
    Unless you do not respond the
    right way.
    Then God will torture you forever.
    In hell."
    Huh?

    神は私たちを愛しています。
    神は、私たちに恵みによって、無償で永遠のいのちを与えようとしています。
    私たちになんら優れたところがあるからというのではなく。
    あなたが正しい方法でこたえない限り、
    神は、あなたを永遠に苦しめます。
    地獄で。

    はぁ

    -----------------------------------------------------------

    とある。この本のテーマを要約したような文章である。要するに、天国観が間違っている、それによって多くの場所で語られている聖書理解が、そもそもの聖書の主張とは異なったものになっているのではないか、ということを指摘している。

    英文自体は、さほど難しくないので、比較的読みやすいほうだと思います(下で紹介するような感じ)。全体を流れるBellという人の主張は、天国とは死んだ後に行くところではなく、地上でも実現するも のであって、神とともに生きることなのである、という理解のようである。それと同時に地上にだって地獄がある、ということをツチ族とフツ族の大虐殺の事例を例に 取りながら説明している。また、従来の天国観や地獄についての理解は、本当は聖書の主張とは異なっているのではないか、ということを主張している。そのことを聖書から丁寧に裏付けている。つまり、いま語られているような理解は、聖書の主張を別物にしたものではないか、本来のイエスの発言をひねまげていないか、という問題意識にたつ主張である。詳しくは、原文に当たってほしい。

    特にいくつかの教会のウェブサイトからの言明を取り上げながら、そのことを例証しているところは秀逸。 第4章 pp.95-96.

    -----------------------------------------------------------


    This is from an actual church website:"The unsaved will be separated forever from God in hell."

    This is from another:"Those who don't believe in Jesus will be sent to eternal punishment in hell."

    And this is from another:"The unsaved dead will be committed to an eternal conscious punishment."

    So in the first statement, the "unsaved" won't be with God.
    In the second, not only will they not be with God, but they'll be sent somewhere else to be punished.

    And in the third, we're told that not only will these 
    "unsaved" be punished forever, but they will be fully
    aware of it-in case we were concerned they might down
    an Ambien or two when God wasn't looking....

    The people experiencing this separation and punishment
    will feel all of it, we are told, because they'll be fully
    conscious of it, fully awake and aware for every single
    second of it, as it never lets up for billions and billions
    of years.

    All this,
    on a website

    Welcome to our church.


    以下は実際の教会のウェブサイトから取ったものである。『信じていない人々は、地獄において神から永遠に引き離される。』

    別のサイトでは、『イエスを信じなかったものは、地獄における永遠の刑罰に送られる。』

    もう一つの別サイトでは、『イエスを信じなかった人々は、永遠の苦しみに送られる』


    最初の文章は、"救われていない人(未信者)"は神とともにいることはできない。
    二番目の文章は、未信者は、神と一緒にいることができないばかりか、さらに、彼らはどこかに送られひどい罰を受ける。

    そして、三番目のものは、私たちに対して、これらの"救われていない人(未信者)"は永遠に刑罰を受け続けるばかりでなく、さらに、彼らは完全にどのような状態であるのかがわかっているということを述べている。このケースの場合、神がご覧 になっていないときにアンビエン(変換者注:睡眠薬系の向精神薬 かなり強力らしい)を1錠か2錠飲んでいればいいのになぁ、と思う。

    このような神からの分離と罰を経験する人々は、このようなことをすべて余すところなく経験するものである、と教えられている。なぜなら、彼らは完全にそのことを経験するのであり、完全に目が覚めた状態であり、間断なく発生していることを理解でき、それは何億年も何億年も終わることがないのである。

    これがすべて教会のウェブサイトに書かれていることである。

    (そんな)教会へようこそ。


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    教会が「救い」を語るために「裁き」を語る場になってしまっているけれども、それって本当に神が望んでおられることなのか?その聖書的根拠は何か?それが本当に裏付けられるか自分でよく考えて見られよ、ということが、基本的に本書のテーマだと思う。言い方を変えれば、「神様」を語るために、「サタンさん」のことを話して、「福音を語ったつもりになっているのでは、ということの問題である。

     それこそ、「福音を(カタ)」ことになっていないか?

    という指摘である。この指摘は痛かった。確かに、具体的な聖書の場所をあげながら、指摘を受けてみれば、これまで、中途半端な聖書理解に基づくいい加減な形で「福音を騙ったことはないか?」と聞かれたら、「ない」とはいえない。被害者の皆様には、この場を借りてお詫び申し上げたい、と思います。

    ただ、私自身、被害者であり、加害者であるというのもまた事実で、このことは、ACやDV、幼児虐待に見られる構図と似ているように思う。最近、Law & Order: Special Victim Unitの見すぎかもしれないなぁ。いずれにせよ、この不幸な連鎖を「ミーちゃんはーちゃん」は、止めたいと思う。少なくとも私に関しては。

     ところで、この本の中で指摘されていたことで、気になった表現があった。これは、この前の続 罪の問題と非キリスト者ホームの信者とキリスト者ホームの子供として育った信者とのギャップ とつながっている内容である。

    以下、Love Wins(第6章 p.152.)から引用して紹介したい。

    ---------------------------------------------

    Access to him can actually function in a strangely inverse way.

    Imagine a high-school student whose family is part of a Christian church.  She belongs to a Christian youth group, has only Christian friends, read only Christian books and has to attend Christian chapel services, because it's mandatory at the Christian high school she attends.

    The student can potentially became so anesthetized to Jesus that she is unable to see Jesus as the stunning, dangerous, compelling, subversive, dynamic reality that he is.  She has simply sung so many songs about Jesus that the name has lost its power to provoke and inspire.

    Her "nearness" can actually produce distance.

    キリストへのアクセスは、奇妙な形で逆方向に機能しうるのです。

    教会に所属する過程の女子高校生を考えてほしい。彼女は、教会の若者グループに属し、クリスチャンの友人だけがいて、クリスチャンの関連書だけを読み、彼女が通うキリスト教主義の高校の義務であるゆえ、教会の礼拝にも参加しなければならない。

    この女子高校生は、イエスについて、イエスが驚くべき存在であり、イエスが危険人物であり、イエスは人々の心を捉え、イエスには社会をひっくり返すほどの勢いがあり、非常にダイナミックな現実的存在であるにもかかわらず、イエスについてそのように見ることができないほど、まったく何も感じない無感動の状態になりうるのである。彼女は、イエスについての多くの歌を歌うものの、その名前は、もはや彼女の中では、想像力を喚起し、刺激を与える力を失っているのである。
    ---------------------------------------------

    あまりに当たり前すぎるがゆえに、あるいは、そのことが押し付けられるがゆえに、そのことに気づかない不感症状態が生まれるという悲劇かもしれないし、続 罪の問題と非キリスト者ホームの信者とキリスト者ホームの子供として育った信者とのギャップ で触れた、罪理解のいい加減さ、聖書理解のいい加減さに由来するのかもしれない。この問題は、どうも北米でも日本でも、共通のものらしい。なぜ、引用したように、キリストに何も感じなくなる可能性があるのか、の考察については、Bellはその章の中では、明確に触れていなかったように思う。まぁ、彼に言わせれば、聖書理解がいい加減なことが原因、ということなのだろうと思う。

    あと、非常に気に入った表現に、第6章 p.144.に次のような表現がある。

    There is an energy in the world, a spark, an electricity that everything is plugged into.  The Greeks call it zoe, the mystics call it "Spirit," and Obi-Wan called it "the Force."

    うーん、さすがBellさん、アメリカ人。スターウォーズで彩られている。zoe を the Force と言い換えて見せるあたりが、この人ならでは。日本では、May the Force be with youとかI am your father.とスターウォーズの有名なせりふのパロディといってみたところで、爆笑はしてもらえませんしね。

     このBellさんの主張は、ある面当たり前なのだけれども、ギリシア語聖書ができた当時は、その人たちがわかる表現、比喩、ぴんと来る言葉の使い方をしていたのであるから、そのことを、話し手はうまく伝えるべきだ、というものです。つまり、現代アメリカ人には、現代アメリカ人にわかるように(スターウォーズの表現なども借りながら)。現代日本人には、現代日本人にわかるような表現をして伝えるべきではないか、というのがこの方のご主張。個人的にはなるほどと同意いたしました。

     聖書の翻訳を変えろ、とは言っていないようですが、聖書の解釈の段階で、人々にわかる言葉で、神が言いたいと思っておられることが何かに焦点を当ててわかりやすく話すべきでしょう、というご主張だと思います。

     ある方向に凝り固まった聖書理解の頭を、本当にそれでいいのか、と問い直すような本です。日本語訳が出ないかなぁ。


    Misty Rae Love wins


    評価:
    Rob Bell
    HarperOne
    ¥ 1,140
    (2011-03-15)
    コメント:面白かった。ちょっと理解に問題がある所もないわけではなさそうだが、刺激的な本。

    コメント
    又、いらぬ突っ込みを・・・・

     教会のみが神と信者の媒介を出来るというパウロ神学(実際はパウロに罪を着せた後学の無名者がいるのかも知れませんが)がそもそもおかしと感じています。
     その上、この教会というのが曲者で、建物(聖堂)や組織を指す場合もあります。聖書から読み取れるのは「仲間の集」運動体というのかもう少し無定型な活動を指しているはずなのに・・・・

     ユダヤ教ナザレ派が世界宗教に変革するのに、確かにパウロは多大な貢献をしたと思います。でもこの部分に関して、私の評価は否定的です。世俗との関係において、政治的にならざるを得ない部分があったにせよ(本当に今では判らない部分が沢山あったのだと)主流が絶対正義でない負の遺産の大きな原因と思えます。
    • ひかる
    • 2011.11.19 Saturday 04:07
    ひかる様 コメントありがとうございました。

    教会のみが神と信者の媒介を出来るということの問題については、ご指摘のように大きな誤解だろうと思いますし、それを虚心坦懐に見直すべきかなぁ、というのが、ここでご紹介したBellという方や、マクナイトの主張だと存じます。より詳細は、こちらで

    http://sugamo-seisen.blogspot.com/2011/09/blog-post_13.html

    まぁ、教会を特定のキリスト者集団であるという誤解してしまったところに、悲劇はあると思います。本当は、コーパス・クリスティはかなり広い概念だと思いますが。とはいえ、このコーパス・クリスティを目指した私どものキリスト者集団も、他のキリスト者に対して非常に冷淡な態度を取っていく、というワナに陥る歴史を見ていると、歴史に学ばない悲劇を思ってしまいます。

    ご指摘の通り、また、教会政治というような妙なことばもあるように、どのようなキリスト者も政治的なものの影響やその関与を受けざるを得ないので、それをどのように評価して、どのように影響していくのか、ということをかなり冷徹に見極める必要があるのかなぁ、と思います。

    コメント、ありがとうございました。
    • ミーちゃんはーちゃん AKA かわむかい
    • 2011.11.19 Saturday 07:39
    Love Wins読みましたよ〜。

    私はOverall、かなり共感しました。かわむかいさんもおっしゃっているように、私も、彼の主張すべてに同意するものではありませんが、でも彼の感じている教会に対するfrustrationは、とてもよくわかると思いました。

    しばらく前に、同じ教会の友人(アメリカ人)に、「ロブ・ベルのスキャンダル、知ってる?」と聞かれました。スキャンダルって、ベルが何かしたのかと思ってびっくりしたら、なんのことはない、Love Winsのことで、「その本なら読んだよ」と言うと、「読んだの? どうだった?」とひどく驚かれました。なんでも、彼女のバイブルスタディのグループでは、この本はろくでもない本としてこきおろされていたそうです。私は彼女にこの本の主旨をごく簡単に説明し、正直に、自分としては共感する部分も多かった、ただ、彼の言うように本当に死後に救われる「マルチプルチャンス」があるかどうかはわからないのだから、あまりそれを強調しないほうがいいのではないかとは思った、みたいに言いました。そうしたら、その彼女の返事が、「そうよね。私は子供の頃にイエス様を受け入れて、今までずーっとイエス様に仕えて生きてきたのよ。その私と、生きている間は好き勝手にやってたくせに、死んでからイエス様を受け入れた人が、同じ天国に行くなんて、受け入れられないわ」と。私はその言葉に驚愕しました。彼女は伝道熱心な人なのですが、この言葉を聞いたとたんに、彼女が伝道する目的、理由って一体なんだったのだろう?と、泣きたくなりました。

    ロブ・ベルのこの本は確かにとてもprovocativeですが、考え方としては、NTライトのSurprised by Hopeやダラス・ウィラードにも通じるものがあります。放蕩息子の話のあたりは、ティム・ケラーの「『放蕩する』神」に通じると思いましたし、死後の救いのチャンスのことは、CSルイスのGreat Divorceに通じます。それなのに、この本ばかりがこんなにやり玉に上がって批判されているのは、不思議な気もします。私は神学者ではないのでわかりませんが、神学的に不正確(原語の意味の理解とか)な部分もあるようなので、それで批判している人たちもいるのでしょうが、それだけではないようにも感じています。

    この本を読んでprovokeされた人は、自分がベルの主張のどの部分にprovokeされたのか内省してみるといいのではないかなぁと、生意気な言い方ですが、そんな気がしました。

    ちなみにロブ・ベルは、Mars Hill教会の牧師を引退し、ハリウッドで新しいテレビドラマの脚本を書くのだそうですよ。教会の壁を超えたところで、少しでも多くの人にキリストの愛を伝えるため、であるようです。
    はちこさん。コメントもらえるなんて…。感激です。

    去年は、かなり深い悲しみの中に沈んでおられたご様子でしたので、遠く離れた日本から密かにご家族のため、祈っておりました。

    Love Win.確かに、死後の救いがあるような書き方がある点などは、どうかなぁ、と思いますが、凝り固まったマインドセットを少しずらしてみて、新鮮な目で自分の信仰と聖書理解を検証してみるという経験ができた、と思います。

    >でも彼の感じている教会に対する
    >frustrationは、とてもよくわかる
    >と思いました。

    そうですね。教会そのもの、というよりは、教会で多くの牧師が当たり前のこととして教え、それを何も考えずに信徒が従ってきた誤った聖書理解に対して、いら立っている、という感じでしょうね。ちゃんと聖書を読んでよね。思い込みで読むんじゃなくて、というのが、Robさんのご主張なんでしょうね。Scot McKnightをいま読んでいるのですが、Robさんが個人的経験に立脚した書きぶりであるのと比較して、McKnightは、他の文献を引用しながら、もう少し体系的に語ろうとしているなぁ、と思いました。中で、Willardの引用があるのですが、それを読みながら、電車の中でげらげら笑っていたら、周囲から冷たい視線を感じてしまいました。

    >なんでも、彼女のバイブルスタディ
    >のグループでは、この本はろくでも
    >ない本としてこきおろされていたそ
    >うです。

    まぁ、私を含め福音派と呼ばれる人々がよく検証もせずに語ってきたことを相当批判していますから、禁書扱いというか事実上の焚書扱いされても仕方がないかもしれませんねぇ。このあたりの柔軟さがないのがねぇ。大和郷の教会の小嶋先生のブログで触れられていた『聖書解釈と無誤論 』でのガイスラー氏等のちょっと狭い態度と共通するものを感じちゃいますねぇ。そういう意味で、自分できちんと調べずに「あんな本はくだらん」という言説に乗る人が多くおられる、ということでしょう。

    >「そうよね。私は子供の頃にイエス
    >様を受け入れて、今までずーっとイ
    >エス様に仕えて生きてきたのよ。そ
    >の私と、生きている間は好き勝手に
    >やってたくせに、死んでからイエス
    >様を受け入れた人が、同じ天国に行
    >くなんて、受け入れられないわ」

    こんなことばが信じられないお気持ちはよくわかります。ブドウ園に最後に行った労働者にも同じように1デナリを農園主が与えたたとえ話の理解はどうなっているんでしょうねぇ。ただ、アメリカンカルチャーの中の、自分で切り開いて自分の成果が評価される社会にどっぷりつかっていると、どうしてもその基準に聖書の基準を合わせていくことになるのでしょうね。

    まぁ、書き方が論争的too argumentative なのと、詩集みたいな書き方で、読み手を広げた。そして、NYTimesのベストセラーになった、というあたりが、主流派の人々の癪に障ったのでは、と思います。まぁ、それと、How you can this to us!みたいなところがあるのではないか、と推測します。


    >ハリウッドで新しいテレビドラマの
    >脚本を書くのだそうですよ。教会の
    >壁を超えたところで、少しでも多く
    >の人にキリストの愛を伝えるため、

    こういうドラマを使ったアウトリーチ、Rob Bellらしいですね。それこそ、スキャンダルになりそうですね。ソープオペラフリークやCSIフリークのようなドラマ依存症みたいな方にMcKnightのいう、福音化した福音をつたえるという意味では、ソープオペラを通じた伝道、というのも大事かもしれませんね。それこそ、スキャンダラスなアウトリーチかもしれませんが…。

    コメントありがとうございました。はちこさんと素敵なご家族の上に祝福と守りがありますように。
    • ミーちゃんはーちゃん AKA かわむかい
    • 2011.11.29 Tuesday 21:11
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