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2018.12.15 Saturday

アメリカのキリスト教会とアメリカ政治をたらたらと考えてみた(7)

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    新たなるモンロー主義としてのトランプ政権の外交政策

    さて、前回の記事で、トランプ政権になってから、国際政治の中で孤立的な政策をとっていることをお話ししましたが、こういう国際協調的でない孤立的な政策を取った経験は、この政権が初めてではありません。アメリカでは、1820年代に主張されたヨーロッパへの不干渉主義であるモンロー主義が標榜された時代が長く続き、その結果として国際連盟(第1次世界大戦の反省でできた国際間組織)をアメリカ合衆国大統領ウッドロー・ウィルソンが言い出したわけですが、国内的に議会での批准ができず、アメリカ合衆国自らが言い出しておきながら、国際連盟には加盟できなかった経緯があります。

     

    今では、アメリカ合衆国は軍事大国で最先端兵器を大量に持ち、世界各国に武器を金額ベースでは大量に輸出している(数量的に一番輸出されている兵器は、中国製かベトナム製のノックダウン製品のAK47 かも知れないけれども)国家になっていますが、しかし、第1次世界大戦時期のアメリカ軍は、19世紀以降のモンロー主義の影響で、国内的に兵器も十分でなく、英国軍の武装を借りないと戦争に参加できないような弱小国家でもありました。まぁ、第1次世界大戦が起きた20世紀初頭といえば、アメリカの内戦である南北戦争から50年ほどしかたっておらず、まだまだ国中に当時の傷痍軍人がいたり、南北戦争期の対立感情やしこりが色濃く残っていたり、という感じであったでしょうから、「また、戦争かい。それもおまけにヨーロッパ戦線でやるの?」といった雰囲気であったと思われます。まだ、当時のアメリカ国家は、ヨーロッパ系の移民を大量に受け入れていた時期ですから、結局移民できた人々か、その子孫が、父祖の地に戦争に行くということをやらざるを得なかったのが第1次世界大戦であったわけです。

     

    世界の武器市場 アメリカとロシアが武器販売額で突出している

    https://www.statista.com/chart/12205/the-usas-biggest-arms-export-partners/ から

     

    過去の世界の大国と国勢調査
    第1次世界大戦までは、海外領土をたくさん持っている大英帝国(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)、フランス、ヨーロッパにおける新興国家でガツガツしていてフランスへの対抗心丸出しでフランスへの戦争マシンだったようなドイツ(このため、日本は陸軍はドイツ陸軍に学んだ)、海外領土はないものの、そもそも領土が広く、人口がやたらめったらと多いロシアといったあたりが基本大国でした。

     

    陸軍というのは、それこそアレキサンダー大王や秦の始皇帝時代以来、基本動員できる人数が勝負の行方を決めるところがあるので、人口が多い国のほうが軍事大国になる傾向があるようです。この陸軍での動員力が重要であるため、その兵士になれる人数を知るため国勢調査という概念が必要になり、そもそもは実施され始め、今に至るまで実施され続けてきました。

     

    第1次世界大戦時代の戦力のグラフ表示圧倒的にロシアの兵力が多く、アメリカ軍はイタリア軍より少ない程度

     

    アメリカ合衆国で消えたフロンティア、その先にある宇宙開発

    19世紀から20世紀初頭にかけては、世界の大国といえば、人口の多い、大英帝国、フランス、ロシアあたりが主軸で、そこでくいっぱぐれた様な人々が経済難民として流れ着く国がアメリカ合衆国であったわけです。なお、アメリカ合衆国では、1890年に公式にフロンティア線(人間が非常に少ない地域)が消滅したこと(つまり人口の受け入れ余地がかなり減りはじめたこと)が国勢調査局から報告されますが、それでも、もともとフロンティアであった地域には、人口が薄い地域があり、そのため、移民(実体的には経済難民)を受け入れる余地がかなりあったわけです。

     

    その結果、波が押し寄せるように段階的にアメリカ大陸にさまざまな人々が流れ着き、あるいは、無理やり農場奴隷などとして、一応借金の方、戦争に負けたための夫妻を追わされる形として連れてこられ、多民族国家にアメリカ合衆国はなっていきます。一時期、アメリカ合衆国は、民族のメルティングポット(民族のるつぼ)と呼ばれた時代がありました。たしかに、アメリカ合衆国は、一応、民族のメルティングポットという側面もありますが、近年のヘイトクライムなどの多発を見てみますと、多民族列島がポコポコとあり、その民族ごとにすみわけしている列島間で、ちょこちょこ橋がかかっていたり、民族の列島間を結ぶフェリーがあったりしながら、多様な人々がさまざまな列島間を行き来しているような感じがします。

     

    アメリカ国内のフロンティアがいよいよ消えちゃったら、ロケット技術が第二次世界大戦でドイツに勝っちゃったんで、V2ロケットの技術が転がり込んで、米ソ冷戦で大陸間弾道ロケット技術の応用編で、アポロ計画で宇宙開発で新しいフロンティアの夢よ再び、を目指したのだけれども、ロッキー山脈越えるよりは、めちゃくちゃ宇宙への道は遠かったのと、これまた宇宙開発競争でもライバルだったソ連が崩壊しちゃったので、競争する意味が無くなったところに、戦争のかたちがこれまでと大きく変わって、宇宙開発技術をアメリカ合衆国あげてやれなくなって、NASA大幅に予算削減されてしまっていて、細々と火星探査などの昔から比べると、小規模な宇宙開発で実施するのがやっとという感じのようです。

     

    多民族国家ゆえの接着剤としての市民宗教として

    存在するアメリカのキリスト教

    では、他民族(エスニシティ)や多文化(マルチカルチャー)間を結ぶその橋になっているのが、個人的な観測で思いでしかないのですが、市民宗教としてのキリスト教だと思うのです。それこそ、アメリカのどの裁判所においても、裁判の公正を示すために、In God We Trustと書きますし、1セント硬貨から、100ドル紙幣に至るまで、In God We Trustと書いているのがアメリカという国の国情です。

     

     

    テキサス州の裁判所 http://www.kltv.com/story/19833882/in-god-we-trust-lawsuit-dismissed/ より

     

    https://www.usatoday.com/story/opinion/2015/10/19/police-in-god-we-trust-first-amendment-column/73891658/

     

     

    つまり、デノミネーション(メソディストとか、カトリックとか、○○正教会とか、バプティストとか、エピスコパルとかといった宗派や教団の区別)を超越した存在が神なのであり、これなら、どのデノミネーション(キリスト教集団)も文句の言いようがないので、In God We Trustと書いているような気がします。

    総合的なキリスト教というか、何となくキリスト教的なもの、社会の空気みたいな存在としてのキリスト教が、市民宗教としてのキリスト教であるように思います。その実態は、多数の個別のキリスト教自身に微妙な違いがあり、一体となっているか、というと、実態的にはかなり怪しい、あるいは危うい存在であるのが、アメリカ合衆国におけるキリスト教という側面があります。とはいえ、同じ神を信じているというなんとなくの感覚が、エスニシティ諸島群ないし分断されたエスニシティ集団というものをかろうじて、そしてぬるく繋いでいるもののひとつが、市民宗教としてのアメリカ合衆国型のキリスト教であるように思います。

     

    国家統合の象徴としての大統領とアメリカ国旗

    あと、アメリカの国家統合を象徴するものがいくつかありますが、それは、Stars and Stripesあるいは、星条旗であったり、国家であったり、大統領であったりするのです。アメリカ合衆国は一つであること、一塊であることの象徴としての大統領があるからこそ、三軍の長として、米軍という実力行使部隊に行動命令が出せると思うのです。だからこそ、オバマは、分断を超えて一つの国になろう、と最初の就任演説で演説したのです。

     

    アメリカを一つにするものは、大統領の存在と一つの神を礼拝しているというアメリカの市民宗教であることを、以下の動画で紹介するオバマ演説では実に如実に物語っています。

     

     

    上記の動画でのハイライトはこの辺かもしれません。

    The pundits, the pundits like to slice and dice our country into red states and blue States: red states for Republicans, blue States for Democrats. But I've got news for them, too. We worship an awesome God in the blue states, and we don't like federal agents poking around our libraries in the red states.

     

    日本語変換 マスコミの評論家たちは、この国を赤い州は共和党の候補支持の州であり、青い州は民主党の候補支持の州といった具合に四角く切り刻んでしまいたがるけれども、その人たちにいま、言いたいことが私にはある。私たちは、一人の偉大な神をその青い州でも礼拝しているし(つまり、民主党の候補支持州でも神は共和党員が礼拝している同じじゃないか、といっている)、赤い州(共和党候補の支持州)でも、図書館の中で連邦政府の役人がのさばって、市民に嫌がらせする(共和党員としても、民主党員と同じように政府の支持を重視する派の人が多いことを揶揄している)のは好まないだろう。

     

    宗教グループや、社会階層や、勤務形態や、家計の資金状態や、学歴や、エスニシティで分断しやすいからこそ、このように再統合や一つであることを言わないといけないし、そこに偉大なる神をもち出さざるを得ないのが、アメリカ合衆国なのだろうなぁ、と思います。

     

     

     

    アメリカ国旗の賛歌 Stars and Stripes Forever

     

    先にあげた市民宗教としてのキリスト教が国民をゆるくつなげる精神世界、霊的世界、宗教世界の接着剤で、政治的な世界でのゆるくつなげるのが、アメリカ合衆国大統領と上下院議会で、金銭的な世界で緩やかにつないでいるのが、連邦準備銀行の会議体とドル札とニューヨーク証券取引所、実物をつないでいるのが、シカゴの商品取引所と、そこでの値動きを受けたスーパーマーケットチェーンということなんでしょう。であるからこそ、大統領の政策に、宗教的世界の価値観であるキリスト教的価値観が反映されていることが重要になっているのだと思います。

     

    市民宗教と大統領で、なんとなくゆるくはつながっているけど、実際に個別の事案の事を言い出すと、政治と宗教の話は、食卓でしないほうがいいという知恵にあるように、結構個別教派の細かな話になっていくと対立的なところがあるのが、実はアメリカだったりして、他のキリスト教徒とは適当な距離で付き合わないと、まずいのも事実ではあります。

     

    福音派教会でも存在する熱烈なトランプ支持者

     トランプ政権が登場したとき、それ以前のオバマ政権がノーベル平和賞を受賞したなど、外政重視的(必ずしもそうとは言えない)に見えたため、国内で見捨てられてしまった、という印象を持ってしまった中西部人にとっては、プロチョイス(人工中絶容認的)であり、伝統的な緩い銃規制で、この地を支配する支配者のツールへの理解の片鱗すら見せない立場で、自然の用を捨てた人々に見えるセクシャルマイノリティの権利の制限には否定的な福音派の立場とは対立的な傾向を持ったオバマ政権と、そもそも女性で大統領になるということを目指したヒラリーたんの有り様は耐えがたかったのではないか、と思います。

     

    それどころか、リチャード・ニーバー先輩が指摘されたように、自分達の住んでいるアメリカ合衆国は、神の国だと思っていたのに、さまざまな具体的政策で、福音派の皆さんにとって、常識と思っていて、自分達が信じているキリスト教的価値観が、それが軒並みオバマ政権のときにひっくり返されてしまったので、それと同じことをやろうとする人々に対しては、非常に警戒的であり、結果、消去法的に福音派は、ほかより増しだし、腐っても現職大統領なんで、自分たちの価値観に政策が(トランプたん個人の人格や品格が、ではなく)近い以上は、文句を言わない、という意味での選択をしているので、福音派の中に、自分たちの理想を政治的に実現してくれるという意味で、かなりまじめにトランプたんを応援している人が多いのだ、と思います。

     

    PBSというアメリカ公共放送のトランプを支持する福音派に関するニュース


    オーストラリアの放送局によるトランプ支持に関する宗教的な統計を用いた分析(面白くて、説得的だけど、英語は、かなりオージー英語が厳しいので、注意)

     

    思うのは、政治的に上からの方法論で宗教的理想を実現させようって態度って、どういうことよ、ということは思います。基本的に、信仰は信仰の問題で個人の信念ベースがあり、それが自然に現実世界での行為に反映されていくはずの話なのに、それを無理やり上から実現するために政治権力を使うってのは、ほんとうにどうなのかなぁ、と思います。政治権力は、神の支配にあることを差し置いて、民主主義政権下では、民の支配の中にあるとはいえ、それをいいことに、政治権力におもねるという態度は、ちょっと理解に苦しみます、というのが、個人的な感想です。

     

     中国という共産党叩きに使える国の存在

    この連載の以前の記事でも触れましたように、共産主義国というのは、アメリカ合衆国にとって、特に福音派的なキリスト教の皆さんがたにとっては、不倶戴天のなんとか的な存在であったわけです。第二次世界大戦のあとは、唯物論でキリスト教とキリスト教徒を排除するという意味でキリスト教的な価値観と思い込んで来た価値観、すなわち自由と民主主義ではなく、一党独裁である旧ソ連邦、それとぐるになって、アメリカの産業資本(実態としてはそこまでの金額ではなかったはず)を勝手に接収・国有化し、挙げ句の果てに自分達の裏庭同然のものと思い込んでいたフロリダ沖のメキシコ湾からミサイルで狙いをあわよくば突きつけようとした許されざるキューバ、朝鮮半島やヴィエトナムで血を流して戦ったのが、共産党支配の中国やソ連に支援された、朝鮮人民民主主義共和国であり、ホーチミンじいさん率いるヴィエトナム人民民主主義共和国であった訳です。

     

     

    もともと、第二次世界大戦のあと、アメリカ合衆国ではマッカーシズムが吹き荒れ、反共産主義的な文化があり、無神論の共産主義とキリスト教は、アメリカでは水と原油の関係で、ルクセンブルグやドイツみたいに、キリスト教社会人民党とかバイエルン・キリスト教社会同盟とか意味不明な存在にしかアメリカ人には見えないのです。

     

    とはいえ、20-10年前までは、中華人民共和国には、圧倒的な人口数であったため、人海戦術的な労働集約的な産業において、低価格の労働力を供給が可能でありました。その結果、企業の合理性の観点からは、嫌でも、世界の工場となった共産主義国と付き合わないといけないアメリカという皮肉な状況ができてしまった訳です。

     

    数十年前、日本が世界の組み立て工場としてやっているうちに資本と技能を高めたように、中華人民共和国も同じようにノウハウと資金を世界の工場をしている間に蓄積して、情報技術分野を根幹として握るまでになり、アメリカの国家安全保障問題に影響を与えるまでになりました。現在では、どんな産業でも部品は生産コストが安いため、精度を要求されないものは中国製ということがごくごく普通になっていて、中国と付き合わずに国際競争力をもって製造業ができる国というのは、もうほとんどないのではないか、と思います。とはいえ、最近、中国も一人っ子政策の影響で若年人口が減ってきていること、それに伴い、労働コストが上昇していること、割と強権的に工場を平気で接収したりするカントリーリスクがあることなどもあり、タイやマレーシア、インドネシア、ウクライナ、・・・といったようなところに先進国が取引している工場が分散されていることも確かです。

     

    昔(1980年代から90年代にかけて7)、アメリカの貿易不均衡国は、当時の世界の工場であったアメリカと喧嘩できない、喧嘩しない、日本という国で、そこそこアメリカが怒っているといえば、行政政策で、アメリカ製品を大量購入してくれる国だったのですが、いま、世界の工場は中国で、共産主義国で、武器は、旧ソ連製の改良兵器やその派生型が多いとはいえ、独自に航空機開発するし、ロケットまで飛ばして宇宙開発する技術まで持ってしまいましたので、アメリカが怒って見せたからといえ、びくつくような国ではありません。そもそも、中国は国連でカード切られても、常任理事国という特権を使って、拒否権が発動できるという、まぁ、堂々とした大国であるわけです。

     

    豹変しながらも一貫しているトランプたん

    そんなこともあり、トランプたんの中国の評価は、かなり豹変します。あるときは、戦闘的で、自国に有利なディールを引き出そうとするし、ファーウェイのCFOの事件だって、倫理性はさておいて、有利な条件を得るのには利用する、って平気で明言するし、周りで見ているものとしては、この人いったい何がしたいんでしょう?中国にシンパシーがあるのだか、敵対的なのだか、よくわからない、という感じではないか、と思うのです。

     

    自分が不動産を売ったから、トランプタワーを買ったからI like Chinaと主張するトランプたん

     

    知的財産権の侵害など不適切な貿易取引をしているから中国に制裁するというトランプたん

     

    アメリカの中間選挙に関与しようとしていると中国を批判するトランプたん

     

     

    ただ、このトランプたんの場合、非常にはっきりしているのは、自分に得になるような話は大好きで、自分をほめてくれる人は大好きで、自分が損するような話は大嫌い、自分を批判する人は大嫌い、役に立つと思えばYou are hired.(おまえさんを雇う)っていうけど、役に立たない、不愉快にすると思えばすぐさまYou are fired.とHなのか、Fなのかで、雇われるほうは大違いということが極めて短期的なスパンで起きている、という意味では一貫している、無矛盾であるとはいえるのです。

     

    その意味で、ある意味、非常にわかりやすい、素朴な行動構造を持った大統領がトランプ大統領ということなのでしょう。まぁ、群集にノーベル賞といわれてご満悦なときなんかは、本当に単純だなぁ、と思います。

     

    政治集会でノーベル平和賞といわれてご満悦なトランプたん

     

     

     

    次回総集編へと続く

     

     

     

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