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2018.12.05 Wednesday

アメリカのキリスト教会とアメリカ政治をたらたらと考えてみた(3)

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    前回の復習

    前回は、北部あるいはニューイングランドと南部及び中西部の関係について、体育会系ノリの人が支持基盤となっていることが多い共和党について、そして、森本あんり先生のご著書の反知性主義についてご紹介し、アメリカでの<中心(北部) ー 周縁(南部・および中西部)>という構造によるねじれが生じていて、アメリカの政治風土がややこしいこと、そして、同じような<中心 ー 周縁>構造が結構世界のあちこちで見られること、その中で、アメリカの福音派と反リベラル神学との関係をとらえるとわかりやすいこと、福音派にもいろいろあって一つとは言えないこと、そして、アメリカ南部におけるリベラル権力者への反発としての反知性主義があり、その主軸が福音派右派であり、それらの人々の影響が日本で強いこと、といったあたりのことをお話ししました。

     

     

    今回は、福音派と政治について何故保守的になりやすいのか、何故、人工中絶、同性婚等が話題になり易いのか、二大政党政治とそれに伴う政治的傾向、日本の宗教世界と政治との関係について、考えたことをご紹介したい、と思います。

     

    さて、基本的に中西部の福音派右派の皆さんは、前回ご紹介した福音主義の定義に近いところでのキリスト教の特性を持った、アメリカの建国の理念となっていると思われる時代に近い、素朴な生き方をしておられる農夫の皆さんや、工場での肉体労働者の皆様がかなりの部分含まれ、その結果として、周辺にいるがゆえに、古いライフスタイルが維持される傾向にあり、東部ニューイングランドへの反感としての反知性主義的な立ち位置の方が多いというお話をしてきました。

     

    建国時代の生活と類似した生活をしているかなりの部分の中西部人

    実は、共和党(保守党、Good Old Party)を福音派右派の皆さんが支持しやすい背景に、この建国の理念時代への生活スタイルの維持、素朴な信仰の問題が書く売れているように思います。保守ということは、昔のスタイルを維持している、維持しようとしている(本当に左様かどうかは別として)という部分があります。ある面、素朴な生き方、古きよき時代の生活スタイルの維持という概念が保守党に付きまとうイメージとしてあり、また、この共和党の候補というのが、大統領候補から、州議会議員にいたるまで、割と保守的な立場に立ちます。たとえば、保守的な立場は、人工中絶とか、銃規制、同性婚といった政治的イシュー(話題)について、保守的な立場でのご発言(銃規制には反対 つまり、憲法修正第2条は守れ 人工中絶反対 つまりピューリタン的な性道徳概念を崩す誘因になりかねないので反対 、同性婚に関しては法制化反対といったご発言)が多いことは確かです。

     

    アメリカの宗教地図

    福音派(右派)のみなさんが多い地域というのは、前回もご紹介したとおり、中西部を中心とした農業地帯であり、北東部への反感を持っている方が多く、また、昔ながらの生き方である農業や狩猟生活が割と生活の大きな部分を占めている地域であるわけです。そして、中西部は、下の図にみるとおり、中西部は、赤く、バプティストが最大信仰者集団であることがわかります。北東部は、カトリックが多く、中西部の北部は、橙色の福音ルーテル派が多く、中西部のちょうど中心部、バプテストの北側には、緑色のUnited Methodistが多く、グレーは末日聖徒イエス・キリスト教会の信者(いわゆるモルモン教会関係者)さんが多いことがわかります。ちらちらと見える明るい黄色は、Church of Christと呼ばれる教会の教会員の多い地域を表しています。

     

    まぁ、このマップは、そのカウンティ(郡)での最大の信徒数の集団(それだけ影響力が大きい)を表現したものですから、そのカウンティの全員がその宗派の信徒さんであるということを表した地図ということはありません。案外カトリックの信徒さんが多い地域が多いというのは、へぇと思いました。

    アメリカのCountyごとの最大宗派の人数別の主題図https://www.reddit.com/r/MapPorn/comments/15ltof/us_map_of_religion_by_county_updated_for_2010/ から

     

    二大政党制故のどちらかひとつになる支持政党

    福音派右派の方々は、農業や鉱工業にかかかわる産業に従事されながら、素朴で伝統的な(Good Old)ライフスタイルの生活をしておられるわけですから、民主党が標榜しておられる政治姿勢よりは、共和党が標榜しておられる保守的な政治姿勢と一致する部分がかなりあることになります。アメリカは、共和党、民主党とは独立に政治活動するバーニー・サンダースのような方もおられますが、少数派であり、各選挙で独立系の候補が多数いるわけではなく、結局、共和党ないし民主党のどちらかの候補を、比較しながら、どちらが自分の理解や生き方と希望と整合的かということが選挙の際の投票行動での判断基準になり易い訳です。結果として、共和・民主の両党のうち、どちらかといえば、自分の生き方と親和性の高い共和党支持の方が福音派右派の人に多い、ということで、福音派右派の皆さんが共和党支持という構造が生まれるように思います。福音派右派だからといって、共和党支持とは限りませんが。

     

     

    イシューで選択される構造

    現在のアメリカの政治的論争(イシュー)は、銃規制反対・同性婚・人工中絶という項目についてのものが多いわけです。なぜ、そうなってしまうのでしょうか。それは、理由があるのです。

     

    二大政党制の場合、経済学でよく知られているホテリングの理論が明らかにするように、二大政党の政策は、きわめて類似したものになりやすいのです(ゲーム理論では、安定均衡である、といいます)。たとえば、民主党も、共和党も貧しい人々への課税軽減には、表立って反対しにくいなどの例も挙げることができますし、日本でも、与党も野党も子育て支援や、高齢者福祉の増大、というのは、基本的に賛成となってしまいます。

     

    ホテリング理論の説明図

    https://www.researchgate.net/figure/Hotellings-ice-cream-sellers-dilemma-Source_fig6_309414186

     

    二大政党の政策が類似するものになってしまうので、共和党を選んでも、民主党を選んでも、差がなくなるわけですから、何らかの差別化を図りたいわけです。そこで、他の候補と差別化を図りやすい、ラベルとして使いやすい指標として、イシューとなる銃規制、同性婚合法化、人口中絶が題材としてとられ、差別化が図られるわけです。

     

    そのうち、保守的で素朴な生き方をしている人々の福音派右派の人々の考え方に親和性が高く、納得的な立場であるのが、昔からある価値観が維持されると思える同性婚合法化反対であったり、人工中絶反対であったりするため、そこを基準として投票を呼び掛け、あわよくば、得票したいという思惑が働いているものと思います。

     

    人工中絶反対(Pro Life)を叫ぶ人たちと人工中絶賛成を叫ぶ人たち

     

    同性婚賛成(Same Sex Marrige)の最高裁判所での判決を伝える動画

     

    あと、アメリカ人は何でも裁判で白黒つける習慣がある(裁判には、黒VSグレーおよび白しかない)ので、そのような精神性もどちらかが正しいということを二分法で決めたがる癖があります。例えば、ディベートコンテストなんかが典型的ですが、架空の議論をするときでも、賛成なのか、反対か、ということで問題を焦点化させて議論させる傾向がありますので、政治的な行動である投票行動の場合は、このような議論が特に先鋭化させる傾向が強くなるため、必要以上に論争的になることもあります。

     

    投票者登録が必要なアメリカの選挙

    日本にいると、投票の案内は自治体から、日本国籍保有者であれば、問答無用で送られてきます(外国人には送られてはいません。たとえ、地方税治めている納税者であっても送られてきません)が、アメリカの場合、投票したいと思えば、まず、有権者登録する必要があります。自分は主体的に政治に参加したい、という声を上げる必要がある場合があるのです。

     

    昔、女性の皆さんやアフリカ系市民の皆さんが選挙に参加しようとした場合、選挙人登録(有権者登録)において、文字の読解試験や、法文を言ってみろ、といった嫌がらせのような対応、難癖をつけることで、有権者登録(選挙人登録)をさせなかった事例が多数あったようです。

     

     

    ともあれ、アメリカでの投票行動は、かなり自覚的な行動を要するわけです。このため、各陣営とも、選挙人登録の補助をしたり、選挙人の皆さんが投票所に生きにくい場合には、自動車で投票所まで案内したり、といったボランティア活動という形での選挙運動が行われます。

     

    ボランティア活動で投票権を確保させ、投票所まで有権者を運ぶということまでして選挙をするのが、アメリカ人の基本理解であるので、投票率が30%台が当たり前、40%台だと、高い投票率とかいう日本の選挙って何なんだろう、ってアメリカ人の方は思うみたいです。なんで、そんなに君たちは盛り上がらないのだ、と。

     

    それは、社会への基本的な関与の方法が違うのと、日本における政治的関与の限界というものが割と一般的な理解として広がっているからこそ、政治に関与する傾向を持つのが、特定の人々に限られる、ということがあるようにも思います。そして、この傾向は、日本のキリスト者でも、かなり一般的な傾向であると思われます。

     

    宗教者と政治 日本の風土

    以前、どこかで、東北教区の聖公会の司祭だったか、その関係者のかたが投票所に行ったら、投票所で、牧師さんでも投票するんですか、と言われて驚いたというブログ記事を書いておられるのをかつて見かけましたが、日本では、平安期以降、長らく仏教者を中心として、政治には関与しないということになっていたので(僧籍に入ることは、世捨て人になることであり、死者と等しくなり、社会の枠外になった人物であることを意味しました)、政治的に排斥された人や、反逆者としての烙印を押された人は、僧籍に入ることで命を長らえる、あるいは、謹慎処分として、僧籍に入ったりしたわけです。例えば、義経とか、昔の上皇が、僧籍に入った姿をして描かれるのは、その辺が理由です。もう、政治には口出ししない象徴として、宗教者になるという道を昔は選択する方が多かったのです。その伝統があるためか、宗教者が政治的な発言をする習慣が日本にはないのかもしれません。

     

    後鳥羽上皇 https://history.wikireading.ru/106464 より(ロシア語サイト)

     

    後白河上皇 https://blog.goo.ne.jp/magohati35/e/140d4947f5ef55733eae745c91209081 より

     

    そして、僧籍(宗教界)に入った人間が政治的な発言をすることは、生臭坊主のすることと、一般に禁忌になっている可能性があるようにも思います。その辺も、日本のキリスト者が、政治的関与が薄い背景にあるのではないか、と思います。

     

    次回へと続く

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

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