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2018.11.23 Friday

アメリカのキリスト教会とアメリカ政治をたらたらと考えてみた(2)

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    前回のまとめ

    前回、米国の政治風土は、かなり地理的に特殊で、東北部ニューイングランドの民主党支持諸州、中西部及び南部の共和党支持諸州、西海岸の民主党支持諸州に大きく分かれる構造が比較的安定的であるというお話をいたしました。そして、この構造は、南北戦争時代から続くある種のアメリカ国内の対立的構造の反映でもある部分があり、南北戦争で南部側であった諸州が、反ニューイングランドという意味で、共和党支持基盤になり、また、中西部の農業を主産業とする諸州が、共和党支持であるということをお話してきました。

     

    北部、ないしニューイングランドと南部及び中西部の関係

    実は、この構造は、キリスト教のグループの歴史ともかなり重なります。前回もちらっと書きましたように、いわゆるキリスト教の中でもリベラル神学、聖書を文字通り信じない、あるいは文献学的に聖書を批判的に読む傾向の強い理性主義的なグループの人々が多いのが、東部のニューイングランド地方に多いということはあります。ある面、これは、ニューイングランドが古くから発展し、南北戦争で勝利し、富の蓄積が進んでいたこと、また、鉄鋼業や機械工業、電機機械工業などが高付加価値型の産業資本の蓄積がぶ厚かったこと、また、南部は、木綿などの農産業並びに木綿加工など繊維業を中心とした軽工業や農業が発展した地域であり、北部に比べて低付加価値型の産業資本が中心であったということもあり、どちらかというと、経済的にはあまり豊かでない地域を多く抱えているといいう問題があります。

     

    そして、南北戦争の北軍勝利への反感が今なおあるので、時々ですが、南北戦争時代のConfederation旗のステッカーを張った車が南部と呼ばれる地域で走るほど、アメリカ合衆国東北部のニューイングランドとそこに住むいわゆるリベラル派の人々への対抗意識をむき出しで見せている部分があります。こういう人たちは、先ほど書いたように右派で共和党支持の人たちが多いので、こんなステッカーも作られているようです。ぞうさんが、共和党を象徴する動物です。

     

     

    南軍の旗のデザインに共和党を象徴するぞうのアイコンを重ねているステッカー

    最下部には、私は正しく育てられたし、私は右派として育てられた、と二重の意味をもたせて書いてある。

    しかし、Red Necker Nation Gear.com ってねぇ。自虐じゃなくて、誇りなんでしょうねぇ。

     

    なお、このRed Neckerっていうのは、差別語なので、間違っても使わないように。

     

    こんな人のことをRed Neckerっていうみたいです。旗にREDNECKって書いてあるし

    https://www.huffingtonpost.com/2012/08/03/confederate-flag_n_1737535.html から

     

    体育会系ノリの人が支持基盤となっていることが多い共和党

     

    そういう意味で、体育会系、肉体労働者系の人々が伝統的に共和党(おおむね保守、Good Old Party)支持増に多く、マジメ系、文科系、ホワイトカラー系の人々が、伝統的に民主党(おおむね、革新系、あるいはリベラル系)支持層に多い、という部分があります。とはいえ、本来、全米自動車労連 UAW United Automobile Workersの関係者の方は、肉体労働職の方が多く、基本体育会系ノリのみなさんが多いのですが、過去の労働問題(賃上げ要求、福利厚生の充実などなど)のかかわりから、民主党系という例外はあります。

     

    反知性主義再び

     

    森本あんり先輩の『反知性主義』という本がありますが、同書での反知性主義は、(ニューイングランドあたりにお住いの)頭でっかちの知性主義者が世俗的権威を振りかざしていることに対して異議申し立てをしている事であると書かれています。

     

    反知性主義は単なる知性への軽蔑と同義ではない。それは知性が権威と結びつくことに対する反発であり、何事も自分自身で判断し直すことを求める態度である。そのためには、自分の知性を磨き、論理や構造を導く力を高め、そして何よりも、精神の胆力を鍛え上げなければならない。この世で一般的に「権威」とされるものに、たとえ一人でも相対して立つ、という覚悟が必要だからである。だからこそ、反知性主義は宗教的な確信を背景にして育つのである。(同書 p.177)

     

    つまり、リベルズであることを神の名においてやるところに、まさに南部人や、中西部人のウェイ系の人々がもつ反知性主義が極まっているのです。そして、この理解は、ある意味で、アメリカの政治風土、特に中西部のウェイ系の農業者の人々の生き方と重なるところがあります。町から、はるかに離れ、隣の家まで、20キロっていうところは、今でも結構あるので、他者からの援助をお願いしようにも、隣家まで馬なのか、車なのかでは知らなければいけない状況の中では、一人で立つしかないからです。

     

    https://dlgrandeurs.com/products/american-by-birth-southern-by-the-grace-of-god-3-x-575-double-flag-sticker から。
    南部は神の恵みによるとか生まれつきのアメリカ人とか、かなり移民に差別的な印象を持ちます。言論の自由が保障されているからいいけど…

     

     

    旧南部連邦の旗とRebelsがデザインされたナンバープレート
    http://dixierepublic.com/product-category/license-plates/ から 

     

    要するに、南部人は、南北戦争の継続として、連邦政府(北軍側)のニューイングランドの知性的な人々による支配への抵抗として、レッドネッカーズ(肉体労働者、農夫、体育会系の人間)として、リベルズであることを自覚的にある種宗教的な熱意をもって選び、反乱を示しているという点において、中西部、及び南部がこれに反旗を振りかざすという意味で、共和党(元々東部エリートの価値を持っていたはずの政党)支持ですし、元々、初期の入植者が、イングランドを出た後、新大陸で農業始めたり、狩猟民になっていったこともあり、自分たちの姿と重なるということもあり、そのニューイングランド時代をほうふつとさせるという意味で、共和党支持となっているというところもあります。要するに、入植者時代の価値観を保存しているのが、共和党であるという、ある種の思い込みが、多くの肉体労働者、農夫の皆さんが共和党支持に回る傾向にあるように思います。

     

    <中心 ー 周縁>構造によるねじれ

    問題がややこしいのは、そもそものアメリカの原型を形作ったニュー・イングランド地方が、豊かになったため、結局、経済的な合理性を追求した結果、土地に縛られる傾向の強い伝統的な農業や狩猟業といった1次産業中心ではなくなり、ついで、2次産業(鉱工業)もその産業としての存立基盤を経済的な収益性から放棄せざるを得なくなり、最終的に人間および土地の生産性が高い(つまり、同じ労働時間、同じ土地の面積で生み出せる金銭換算の収益が最も高い)3次産業(商業・サービス業)が経済の中心になる中で、ニューイングランドが、Old Good Days的な産業構造を持たなくなったこと、3次産業が主たる産業になる中で、人間も頭でっかちにならざるを得ないこと、また、ニューイングランドは、南部にいたアフリカから、ほぼただ同然で労働力として、つれてこられたアフリカ系の人々を奴隷状態から開放する側にまわったこともあり、人権重視型の思想傾向を持つことから、伝統的にリベラル思考が非常に強い地域になってしまったことでした。

     

    もともと、Old Good Partyが表象していたような、あるいは、建国の父祖たちといった人々が過ごしていたような生活スタイルとや、思考スタイルとは、かなり異なった生活スタイルになり、思想スタイルもかなり変わっていく中で、辺境であった南部や、辺境であった中西部が、第1次産業、第2次産業の中心地となっていったために、その思考スタイルが保守主義、あるいは共和党支持として残る、という現状が生まれたようにも思います。ある面、本家はとっくの昔に変わったけど、周辺にある分家のほうは、本家との連絡が切れてしまうために、本家から分離した時代のスタイルや、文化が変わらず保管されていく、というような事例です。特に、周縁でのコミュニティが孤立的になればなるほど、この文化が変わらずに保管される傾向が強まります。

     

    同じような<中心 ー 周縁>構造

    同じような<中心ー周縁>構造は、世の中にたくさんあります。昔のペルシャの異物は、日本の正倉院のほうがたくさん残しているとか、アイルランドのカトリックは、ローマカトリックの古いスタイルをいまだに維持しているとか、九州方言や東北方言に、日本の古い大和の言語表現が残っているとか、日本の本体は、とっくの昔に戦争やめたけど、フィリピンにいた小野田少尉は、戦後も戦争を独自にジャングルの中でつづけていた、とか日本の日本基督教団系のキリスト教は、1940年以前のアメリカ風の神学の影響を強く残しているとか、日本の福音派は、1980年以前のアメリカの福音派の神学の影響を保存しているとか、まぁ、色々、現象面では似たようなことがあるわけです。

     

    小野田少尉 https://dot.asahi.com/wa/2014012100055.html から

     

    日本アホバカ分布図 https://okadatoshi.exblog.jp/m2013-08-01/ から

     

    要するに、中心変化ー周縁維持構造問題とミーちゃんはーちゃんが読んでいるところの構造が、アメリカにおいても起きているわけです。中心はとっとと変わるけど、周縁部の人々は、中心がすでに代わっていることを知らず、延々と昔ながらの生活パターンを維持するという構造です。

     

    アメリカの福音派と反リベラル神学

    福音派の定義は、ベビントンの定義代わりと一般的な定義なので、Wikipediaの福音派の記事の一部をそのまま流用します。

     

    「福音派は、四つの顕著な特徴によって、正統派と識別される」としている。

    • 回心主義 - 個人的にイエス・キリストを受け入れる信仰によって変えられなければならない(ヨハネ3:7)。
    • 行動主義 - キリスト教信仰、特に福音伝道の実践。
    • 聖書主義 - 霊的生活の中心としての聖書。
    • 十字架中心主義 - キリストの十字架とそれがもたらした幸いの強調。

     

    ここで、聖書中心主義とのかかわりで、聖書を文字通り読む、人間的な解釈の介在の可能性を排除するという傾向を福音派が持つため、ニューイングランドにあるイェール大学だのハーバード大学だのの神学部などで発展した聖書はテキストなんで、それ、神様が示した後、変わったり、編纂が入っているかもしれないし、とか理性的な立場に立ち、聖書の十全性を疑うかのような物言いを言い出すようなリベラル神学に対して、非常に批判的な立場に立つ人々が多いのも事実だと思います。

     

    福音派にもいろいろありまして…

    とはいえ、この福音派の中にも、

     

    福音派右派と呼ばれる、どちらかというと、個人より国家、社会優先、古い福音派内での伝統的な礼拝スタイルにこだわりの強いグループ、戦争への参加を含め、国家に対する忠誠を重視するグループ

     

    福音派左派と呼ばれる、国家や社会より、弱い個人への優先を重視し、必ずしも福音派内での古い伝統的な礼拝スタイルにこだわらないし、政権に批判的で、国家と戦争に反対するグループ

    の2種類に大きく分かれる部分があります。

     

    リベラル神学VS原理主義的福音主義というほどの対立軸ではありませんが、かなりのグラデーションがアメリカの内部の福音派の人々の言説を見ている限り存在します。日本だと、あまりそのグラデーションは感じられませんが、福音主義神学会などに出ていると、いろいろな教派がありそれぞれごとに用語の定義というか語彙の味わいが微妙に違うまま、同じ用語を使うので、議論がずれているなぁ、と感じることがあります。まぁ、福音派を「ふくおんは」とお読みになられるようなNHKのアナウンサーか、記者にとっては、両方とも『何それおいしいの、それってプロテスタントじゃんねぇ、以上終わり』なのだとは思います。

     

    個人的には、福音派右派的な傾向を持った教会の中でで、福音派左派的な社会的弱者への対応の主張を心と説教者としてしていたり、超教派活動(いずれも、破壊工作活動扱いだった)をしていたので、居心地がかなり悪い生活を10年余りその福音派右派的な傾向をお持ちの教会で過ごしたあと、陪算停止処分をありがたくも、また、恐れ多くもかしこくも頂戴し、アングリカンのリベラルな司祭が司式しておられる漂泊者向け(船員さん)の教会に受け止めていただくことになりました。まぁ、自主的に映るのか、強制的に映ることになるのは、時間の問題だったかもしれません。

     

    リベラル権力者への反発としての反知性主義と福音派右派と日本

    さて、先にも反知性主義の引用からお示ししたように、反知性主義は、リベラル派の人々が国家権力を握っていることに対するある種宗教的反発という傾向が強いことが特徴ですし、右派福音主義派(要するに、キリスト教原理主義のかなり強硬な人たちとかなりの部分、共通項が多い)のかなりの皆さんは、東部エリートと呼ばれる人々の、聖書を聖書とも思っていないようなかなり自由な物言いや振る舞いに、我慢がならないタイプの方も多いのも事実ではないか、と思います。

     

    日本に戦後急増したアメリカ渡来のキリスト教の教会群は、ベビントンの定義の3番目、行動主義(もともとアメリカ人はプラグマティズムの人が多いので、行動主義的なのですが)の人々の「宣教は、大会でも、イベントでも、なんでも聖書の言葉、あるいは福音を言葉で語ってなんぼ」というタイプ、あるいは言葉で語るタイプの行動主義の人たち、それも、日本に駐留した米軍兵士たちがそのまま日本に残留する、あるいは、アメリカ本土から伝道者として派遣されるなどして、伝道活動あるいは宣教活動にいそしんだ人々のおかげさまでできた教会群が多いので、戦後生まれのプロテスタント教会は、割と、米国の福音主義的な教会の持っていた福音理解をそのまま引き継いだものが、かなりの割合で含まれる、ということができようか、と思います。

     

    再びアメリカのキリスト教

    これまでお話してきましたように、アメリカは、広大な北米大陸の一部のかなりの部分を締めており、産業的にも、経済的にも地域格差が激しく、また、市民宗教としてのキリスト教という意味では一つにちかい(最近は、カリフォルニア禅や、東部でのムスリムの増加、ユダヤ系市民の増加の問題などなどがあり、必ずしも一つとは言えない傾向もある)ところはあるのですが、アメリカ国内も非常に多様で、キリスト教を一括りにするような議論はしにくい部分があります。

     

    ただ、アメリカの福音派の教会にいくつか、出張先で参加させてもらった限られた経験からですが、すべての教会に、説教壇のあるプラットフォームというかその部分に、星条旗が出してあるのが、アメリカの福音派の教会での経験でした。割とよくある福音派の写真を拾ってくると、端っこの方に、アメリカ国旗が立っているのがわかります。

     

    ルター派の教会 https://oursaviorgrafton.org/school/music/ 

    バプティスト派の教会 calendar.google.com/calendar/r/month/2018/9/1

     

    北東部のニューイングランドの神学的傾向は、19世紀に、当時のカッティングエッジだったドイツ神学の影響、特に、聖書のテキストの真正性を脅かしかねない神学的なアプローチが持ち込まれて以降、リベラル化が進んでいきますし、バプティスト出身のラウシェンブッシュ(名前からして、ドイツ系)先輩が、移民、工場労働者、単純労働者といった社会的弱者対応のための神学として、社会的福音を言い出したりしましたので、その面でも、社会派的、社会運動的な傾向を持った神学がかなり主要な幅を利かせた面があります。

     

    それに敢然と抵抗してみようとしたのが、中西部の農村にいたクリスチャンたちで、彼らは理想化された伝統的な生き方を捨てた東部エスタブリッシュメントへの反感から、それらの概念へのリベルズ(反逆者)として、自分たちの”素朴な”信仰の根拠は、聖書のみであり、その聖書の成立を云々して聖書理解を揺り動かしかねない東部エスタブリッシュへの反動として、聖書根本主義(一般に原理主義と呼ばれる)を主張していきます。その意味で、自ら手を汚さず、金儲けをしているかに見える東部の金持ちたちが、自ら泥と土にまみれ、自然と格闘し、そして、力生まれる農産物を通して神の恵みを受けようとしたアメリカ合衆国の建国の理念を忘れた人々との対立でもあったわけです。その結果、前回もご紹介したように、伝統的に東部エスタブリッシュメントがリベラルか、民主党支持に回る傾向の反動として、中西部では、共和党支持に回るという立ち位置を取る行動パターンへとつながっていきます。

     

    次回、福音派と共和党支持の背景などについて、述べていきたいと思います。

     

     

     

     

     

     

     

     

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